サンマのお供に「甲州」 日本ワイン、意外な調和国産ブドウ、人気支える

ブドウの収穫期が終盤に入り、日本各地のワイナリーでワインが仕込みの時期を迎えている。近年は本場の欧州でコンクール入賞が相次いだことをきっかけに、国産ブドウを国内で醸造した日本ワインの人気が高まっている。ブドウは日本独自のものを含め幅広い品種が国内栽培されている。ワインの風味と密接に関わるブドウの品種を探ってみた。

収穫作業、ヤマ場に

10月初旬、25ヘクタールの農園を抱えるサントリー登美の丘ワイナリー(山梨県甲斐市)は「メルロー」の収穫作業がヤマ場に入っている。フランスのボルドー地方を発祥とするメルローは赤ワインの代表品種。同ワイナリーは他に欧州で盛んに栽培される「カベルネ・ソーヴィニヨン」「シャルドネ」に加え、日本固有の「甲州」「マスカット・ベーリーA」など10種類以上を栽培している。

甲州は日本固有のため病害が発生しにくいという(山梨県甲斐市)

ひときわ目を引くのが収穫時期が間近に迫った甲州だ。白ブドウながら赤紫色の果皮をしており、張りのある粒が美しい。日本で栽培が始まったのは千年以上前で、江戸時代には水菓子として親しまれたという。サントリーワインインターナショナル(東京・港)国産ブランド部の前田淳志さんは「雨の多い日本の風土でも病害が出にくい」と話す。

「すだちやかぼすの風味」

甲州で作ったワインは和食に合うさっぱりした味が特徴だ。これを生かしたワインがサントリーワインインターナショナルの「ジャパンプレミアム甲州」。かんきつ類に例えるなら「すだちやかぼすのような風味」(前田さん)で、食材と合わせるならサンマがぴったり。さっぱり感を損なわないよう熟成に木樽(たる)でなくステンレスタンクを使っている。

甲州の持つかんきつ類のような風味が注目される契機となったのがメルシャンが2005年から販売する「甲州きいろ香」。フランスの大学との共同研究で、かんきつ系の香りが最大限に発揮されるようブドウの収穫時期を調整したワインだ。こちらはグレープフルーツの香りと形容される。

マスカット・べーリーA、フルーティーな甘さ

マスカット・べーリーAで作ったワイン(写真中央)はフルーティーな味わいが特徴

国税庁のまとめによると、甲州は13年に国産ワインの品種構成比で首位の17.3%を占めている。これに次ぐのが15.2%を占めるマスカット・べーリーAで、赤ワイン用品種に限ると首位になる。日本のワイン造りの父といわれる新潟の故・川上善兵衛氏が品種改良することで1927年に生まれた品種だ。かつては生食が一般的だったが、日本ワイン人気を背景に現在は醸造用途が中心になっている。

この品種で造ったサントリーワインインターナショナルの「ジャパンプレミアムマスカット・べーリーA」はフルーティーな甘さが特徴だ。赤ワインとしてはタンニンが少なく白ワインのように冷やして飲むこともできる。近年は輸出に力を入れており「気温の高いシンガポールや香港で好評だ」(前田さん)。

日本の評価、欧州系ブドウの栽培も背景

10年に甲州、13年にはマスカット・べーリーAが国際ブドウ・ワイン機構(OIV、本部パリ)で品種登録され、日本ワインが世界で注目された。ただ、前提として欧州系の品種が国内で栽培されて評価を高めたことも見逃せない。メルシャン営業本部の藤野勝久氏は「フィギュアスケートに例えれば、甲州やマスカット・べーリーAは自由演技。欧州系は規定演技のイメージ」と話す。同社の「桔梗ケ原メルロー」は長野県産のメルローを使っており、フランスワインに近い濃厚な味わいが特徴だ。甲州やマスカット・べーリーAを使った軽やかなワインとは一線を画す。

醸造法だけでなく、品種や土地柄が風味に反映されるのがワインの魅力。近年人気が上昇しているチリワインには「カルメネール」という品種がある。100年以上前にフランスで栽培されていたが、病害による淘汰を経て今はチリが主産地となっている。風味はメルローと似ているが「チリの風土を反映した土っぽさがある」(成城石井商品本部の榎本真城氏)。品種に思いをはせると、これまでと違ったワインの味わいが感じられる。

(商品部 龍元秀明)

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