ライフスタイルと好みで選ぶイチ押し炊飯器
私をささえる最愛家電 炊飯器(後編)

「最新炊飯器のトレンドはわかったけど、おすすめの炊飯器を教えてほしい」という方向けに、今回はメーカーごとにくわしく紹介していきたいと思います。
南部鉄器の新型羽釜で、さらに大火力炊き上げ
南部鉄器極め羽釜 極め炊き(象印)

まずは炊飯器業界の「西の横綱」ともいわれる象印の製品を紹介しましょう。8月21日に「極め炊き」の新製品が登場しました。最大のポイントは、独自の形状である「浅くて広い羽釜」がさらに進化したこと。従来の羽釜に改良を加え、より効率よく熱対流させる釜底の角度、側面の「羽」の形、局所加熱を抑える厚みなどを計算しつくした、まさに名称の通り「極め羽釜」。最上位機種のNW-AS10は羽釜の素材に南部鉄器を使用し、一品一品手作りで仕上げており、内釜はかなり重めです。内釜に南部鉄器を使った3.5合炊きモデル(NP-QS06)もあります。
炊飯方式は、現在の電気炊飯器で主流ともいえる圧力IH。沸点が高くなるため、「もちもちしたご飯が好き」な人にはおすすめの炊飯方式です。もちろん炊き分けメニューを使えば、もちもちだけではなく、シャキシャキっとしたご飯も炊きあげられます(最大121通りの炊き方が可能)。
もう一つ、新機能として搭載されたのが、ボタンを押すとふたが自動で閉まる「スマートクローズ」機能。手がふさがっているときに便利な機能です。
シャキシャキ系炊き上がりが得意、スマホとも連携
備長炭 炭炊釜 NJ-VA107(三菱電機)

続いて東の横綱、三菱電機。実は三菱電機は炊飯器業界のトレンドセッター。2006年に発売した「本炭釜」が大ブレイクし、現在の「高級炊飯器」のトレンドをつくりました。その後、炊飯中に出る水蒸気による結露や炊飯の匂いが気にならない蒸気レス炊飯器の開発、米の銘柄別炊き分けの提案など、多くのトレンドをつくりました。
三菱は先に挙げた象印とは異なり、炊飯方式は昔ながらの「かまど炊き」。つまりかまどと同じ、自然な圧力(1.0気圧)で、かまどのように吹きこぼれるような火力を持続して炊く「連続沸騰」をIHで再現しています。上位モデルで非圧の炊飯方式を採用しているのは、今のところ三菱だけ。お米の炊き上がりはどちらかというと「シャキシャキ系」。料理教室の先生などからは、昔ながらの炊き方を再現しているため「おいしい炊き上がり」と高い評価を得ています。どちらかというと「さっぱりめのご飯が好き」という人におすすめです。
「備長炭 炭炊釜 NJ-VA107」ではスマホで炊飯設定ができる機能をいち早く搭載。アンドロイド対応スマホ向けの専用アプリ「らくはん炊飯」をインストールすれば、音声やタッチで簡単に炊飯設定ができます。炊き上がり時刻も通知してくれるので、他の用事をしていてもうっかり逃すことはありません。
土鍋で炊く炊飯器、おいしい麦飯もお任せ
土鍋圧力IH炊飯ジャー THE炊きたて(タイガー魔法瓶)

タイガー製品の特長は内釜に土鍋を採用していること。プレミアム本土鍋ではふたも付いているので、そのままおひつとして使うこともできます。
そしてもう一つの特長は、炊き分けコースに「麦めしメニュー」を設けていることです。しかも麦めしメニューは押麦メニュー、もち麦メニューの2種類を用意。押し麦ともち麦は同じ大麦でも品種が異なり、押し麦がうるち性の大麦なのに対し、もち麦はもち性の大麦。食感が異なる2つの麦種に合った炊き分けができるということです。毎日、手軽に食物繊維をとりたいと考えている人や、ダイエット・美容によい食事を検討している人にとっては、うれしい機能といえるでしょう。少量炊き(3.5合炊き)モデルもあります。
真空技術で早炊き、長時間保温も大得意
かまど本羽釜(東芝)

東芝の最新モデルは今年2月に発売された「かまど本羽釜」シリーズ。内釜はかまどの形を徹底的に意識したつくりとなっています。東芝の炊飯器の特長は真空技術を応用しているところ。例えば洗米後、すぐに炊飯スイッチを押しても、ふっくらと炊き上がります。真空ポンプで米の中の空気を追い出すことで芯まで水を浸透させるのです。早炊きも上手で、「そくうまコース」を選べば約26分でふっくらとおいしく炊き上げることができます。
真空技術は保温機能にも応用されています。前回も紹介しましたが、ご飯の黄ばみや乾燥、酸化を抑え、白米なら最大40時間おいしく保温します。しかも2.5合炊きという小容量タイプも登場。共働き世帯にとっては、非常に便利な炊飯器といえます。
「買って損はない」優等生タイプ
Wおどり炊きSR-SPX6シリーズ(パナソニック)、
圧力スチーム炊き ふっくら御膳、打込鉄釜 おひつ御膳(日立)
忘れてはいけないのがパナソニックと日立の製品。どちらも、「買って損はない」といえる優等生タイプです。

パナソニックの特長は220度のIHスチーム。スチーム(過熱水蒸気)を噴射し、釜の中のお米を高温加熱するという方式を採用していること。保温しているご飯の再加熱もこのスチーム機能を応用することで、炊きたてのような熱々ご飯に仕上げてくれます。さらに、全国41もの銘柄米に対応した炊き分けができるのも特筆もの。

日立の炊飯器「圧力スチーム炊き ふっくら御膳」の特長は、お手入れの簡単さ。蒸気口一体型内ぶたを採用しているため、洗浄する部品は内釜を除くとたった3つ。しかも分解できて洗いやすい。内釜の重量は約720gと軽めで、とにかく取り扱いのラクなところがうれしい炊飯器です。
少量炊き炊飯器で注目したいのが、日立の「おひつ御膳」(2合炊きまたは4合炊き)。熱源部とおひつ部が分離する構造となっており、おひつ部を外して食卓に運べます。ちょっとした旅館気分が自宅で味わえる炊飯器です。
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炊飯器によってお米のおいしさは大きく変わります。新米をとびきりおいしく味わいたいならぜひ高級機種を。きっと毎日、ご飯の時間が待ち遠しくなります。
大手プレハブメーカーでインテリアコーディネートを担当し、インテリア研究所を経て商品企画部へ。その後、インテリア&家電コーディネーターとして独立。情報ポータルサイトAll Aboutをはじめ、雑誌・新聞・テレビなど幅広いメディアで活動中。家電業界出身ではない中立的な立場と消費者目線での製品評価や、分かりやすい解説に定評がある。
(ライター 中村仁美)
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