いつものスマホでナビを操作　「Android Auto」開始

Googleは、2016年7月13日、「Android Auto（アンドロイドオート）」の提供を日本国内で開始した。Android Autoとは、Googleが開発したスマートフォン（スマホ）用のOS、Androidを搭載したスマホを、クルマの車載システムに接続してスマホの機能を安全に利用できるようにするシステムのこと。

同社が2014年に米国で発表すると、2015年には最初の対応モデルとして韓国の自動車メーカー、ヒュンダイの「ソナタ」が発売され、以降現在までに、40以上の自動車メーカーや車載機メーカーによって、100種類以上の対応モデルが販売されてきている。

Android Autoは既に30カ国以上でのサービス提供が発表されており、今後は地域を拡大して普及、促進する予定だという。

使い方は、Android 5.0（Lollipop）以降を搭載するスマホにAndroid Autoアプリをインストールし、対応するクルマのシステムにUSBケーブルで接続するだけ。これで車載のセンターディスプレーなどにAndroid Autoの専用画面が立ち上がり、車載の音声入力やタッチパネル、コマンダーなどを使ってスマホを操作できるようになる。

Googleの広報担当者によれば、「近年、スマホは生活に欠かせないものとなり、常に携帯するだけでなく、車内に持ち込んで利用する人も多い。しかし運転時に操作することは安全ではない。また通常のスマホは車載向けとして作られていないので、機能も不十分だった。これを改善するために、Android Autoを開発し始めた」という。

Android Auto担当プロダクトマネジャーのダニエル・ホーリ氏は、この機能の大きなメリットとして「高い安全性」「スマホ同様の直感的な操作性」「Googleサービスを車内で 使えること」の3つを挙げた。特に開発では安全性を最優先し、ディスプレーを見なくても音声で「Googleマップ」などのアプリ機能や通話、メッセージの送信を可能にしたと強調。 安全への配慮から、車両と接続中のスマホはロックされ、スマホ画面へのアクセスができなくなるようにしたという。

一方、操作性はスマホの機能をそのまま車内で使えるように、スマホ同様の直感的な操作になっている。使い慣れた機能を迷わず操作できることで、安全性が確保できるという。

さらにサードパーティー製のアプリが使えるのもAndroid Autoの魅力。こうしたアプリを使えば音楽やポッドキャスト、オーディオブックプレーヤーなどのメディアプレーヤーを車内で楽しんだり、メッセージングアプリを使って着信したメッセージを読み上げて、音声入力で返信できるとした。

またサードパーティー側に対しては、Android Auto対応アプリを開発できるように、Android Auto対応のAPI（アプリケーションプログラムインターフェイス）を用意。単一のプラットフォームで車載向けアプリが開発できるので、様々な車種や地域への対応がスムーズになるメリットもあるという。

現在は数百種類のアプリがAndroid Autoに対応しているとのことだ。

今のところ日本ではアウディ、フォルクスワーゲン、ホンダ、マセラティなどの自動車メーカーがAndroid Auto対応車を発売済みで、日産自動車はディーラーオプションのカーナビゲーションにAndroid Auto対応機を設定することを公表している。また自動車メーカー以外では、パナソニックがAndroid Auto対応のカーナビを発売している。

発表会当日、Android Auto対応のアウディ「Q7」を使ったデモに参加したが、スマホとクルマの接続はUSBケーブルでつなぐだけとシンプルだった。アウディの場合、操作にはステアリングスイッチとロータリーコマンダー、そして音声入力が利用できる。車側のインターフェースとの接続は自動車メーカーが用意している。

Googleによると今回日本で導入されるAndroid Autoは、日本語での入力や音声認識機能については十分な性能を備えているという。

デモはGoogleマップのナビ機能を中心に行われたが、スマホのGoogleマップのナビと同様に簡単に使え、音声入力も問題なく動作していた。既にAndoridスマホを利用している人なら、簡単に使えそうだ。

ただし、対応アプリが限られているので、現時点で感じられるAndroid Autoの恩恵は限定的になりそうだ。また現行の車載ナビにも独自にスマホとの連動アプリや機能があり、今後、しばらくは使い慣れたナビの機能を使い続ける人も多いはずだ。

Android Autoとの単純な比較はできないが、車載システムはそれぞれ独自に進化してきており、特有の便利なサービスを提供している。

例えばレクサスやBMWなどは、独自のテレマティクスサービスを提供しており、これらは利用料こそかかるものの、専用のスタッフが音声で対応してくれるので便利で簡単だし、フレキシブルな対応も望める。またナビ画面のこまやかな表示やていねいな案内など、まだまだ専用の車載ナビのほうが一枚上手といえる部分も多い。

とはいえメリットが感じられたのも確かだ。例えば、レンタカーやカーシェアなどで慣れないクルマを使う場合だ。車両がAndroid Autoに対応していれば、ナビや電話、オーディオプレーヤーなどは、いつもの使いなれたアプリを利用できる。

世界的にもサービスが始まって間もないAndroid Auto。Appleが提供する同様の機能を持つCar Playを含めて、ある程度の利便性は感じられるものの、搭載車も対応アプリも限られるために、積極的に使いたいという感覚はまだ湧かない。いずれはスマホ同様に当たり前のものとなるかもしれないが、その認知や普及はこれからだ。また長距離移動や車両の変更が限られる日本のユーザーがどれほどメリットを感じるかも普及の重要なファクターとなりそうだ。

（ライター　大音安弘）

［日経トレンディネット　2016年7月21日付の記事を再構成］