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「エアコンは電気代が高い」のウソとホント

日経トレンディネット

2016/7/20

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日経トレンディネット

7月に入って、いよいよ夏真っ盛りだ。2016年の夏は「史上最も暑い年になる」と言われている。実際に「エアコンの効きが悪い」などと感じている人も多いのではないだろうか。古いエアコンを使い続けている人は、冷房代がかさみそうな今年の夏こそ買い替えどきだ。そこでエアコンを選ぶ前に、最新のトレンドについて紹介していこう。

■エアコンは“電気食い虫”?──半分はホント

2011年3月に発生した東日本大震災によって電力危機が発生したことは記憶に新しい。当時は地域持ち回りで計画停電を行うなど電力需給バランスが大幅に崩れたことから、省エネ気運が高まった。

当時はエアコンを使わずに扇風機で過ごす人が増え、扇風機もAC(交流)モーター搭載の従来機種から高級なDC(直流)モーター搭載の高級機種が飛ぶように売れた。それは「エアコンは電気を食う」というイメージが広く浸透していたことも大きな要因になっていると考えられる。

ではエアコンは本当に省エネの敵なのか? これについては「イエス」とも「ノー」とも言える。

まず「暖房」と「冷房」の違いを考えたい。今の時期必要な「冷房」の比較対象は「扇風機」になるため、これと比較するとエアコンの消費電力はかなり高い。

例えば、エアコンのパナソニックの最上位機種「Xシリーズ」の10畳用モデル「CS-286CXR」(単相100Vモデル、実勢価格20万1260円)の場合、冷房の期間消費電力量(6月2日から9月21日までの112日間で、設定温度は27℃、時間は6時から24時までの18時間)は203kWh。冷房期間の電気代の目安は5481円となる。

パナソニックの「Xシリーズ」(写真は14畳用モデルの「CS-X406C2」)

一方、一般的なACモーター搭載の低価格扇風機の場合、消費電力は40W前後だ。24時間使い続けても1カ月の消費電力量は28.8kWhで、1カ月の電気代は778円(1kWhあたり27円換算)程度。上記のエアコンと同じ計算式(1日18時間×112日間)で単純に計算すると、一般的なACモーター搭載扇風機の期間消費電力量は約81kWhで、電気代の目安は約2177円となる。

エアコンを、「単純に送風するだけの機械に比べて約2.5倍程度の電気代で済む」と考えるか、それとも「扇風機よりも約2.5倍も電気代がかかる」と考えるかはそれぞれの考え方次第だ。ただしACモーターに比べて消費電力の低いDCモーター搭載扇風機の場合、エアコンとの差はさらに開いてしまうことは覚えておいてほしい。

■実は「扇風機並み」の省エネエアコンもある

先ほど、冷房機能については比較対象が扇風機になってしまうため、省エネとはなかなか言いづらいと紹介した。しかしそこはメーカーも十分承知しており、一部のメーカーは扇風機並みの消費電力を実現した機能をラインアップしている。

例えば東芝の「節電運転」モードの場合、冷房・暖房中に「節電」ボタンを押すだけでACモーター搭載扇風機並みの消費電力45Wでの運転が可能になる。2つのシリンダーを搭載し、必要な能力に応じてシリンダーの運転を切り替える「エナジーセーブコンプレッサー」の採用によって実現したもの。冷房能力の下限が0.2kWと他社に比べて低いのは、このエナジーセーブコンプレッサーがあってこそと言えるだろう。

東芝の「エナジーセーブコンプレッサー」の仕組み(東芝のWebサイトより)

三菱電機の「ハイブリッド運転」の場合はセンサーで体感温度を検知しながら、体感温度が高いときは冷房、低いときは「爽風」(送風モード)というように自動で切り替えられるようになっている。

■暖房の省エネ性能はかなり高いので大いに使うべし

一方、暖房でも「エアコンはエネルギー効率が悪い」と考えている人は多いのではないだろうか。だが実は、エアコンほど省エネ性能の高い暖房器具は他を見渡してもないのだ。

一般的な電気暖房はエネルギー効率が悪く、暖房代(電気代)がかかってしまうのは間違いない。しかしエアコンの場合は効率性を大幅に向上する「ヒートポンプ方式」を採用しているので、消費電力以上の冷暖房性能を実現しているのだ。例えば前出のパナソニック「CS-286CXR」の場合、消費電力は690Wで、暖房能力は3.6kWだ。1000Wの電気暖房の暖房能力は1000Wだから、エアコンの場合は約5.2倍もの暖房効率になる。

パナソニック「Xシリーズ」の10畳用モデル「CS-286CXR」(単相100Vモデル、実勢価格20万1260円)の仕様(パナソニックのWebサイトより)。690Wの消費電力で3.6kWの暖房能力を実現していることになる

エアコンの場合は冷房も暖房も空気が乾燥するという大きなデメリットがあるものの、暖房効率についてはかなりの優等生であることを覚えておこう。

■10年前に比べて省エネ性能はあまり進化していない

「昔のエアコンを使い続けると電気代で大損する」といったことをよくいわれるが、これも半分はウソといってもいいだろう。

下のグラフを見ると分かるが、たしかに1995年から2000年までのたった5年間でエアコンの電気代が約3分の2にまで減っている(経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ」より筆者が作成)。その後も2006年まではじわじわと電気代(冷房+暖房の年間消費電力量)が下がっているが、その後9年間はほぼ横ばいなのだ。

要するに20年前から同じエアコンを使い続けている人は電気代で大幅に損をする可能性があるが、10年から15年ほど前であればそれほどでもないといえる(もちろん年々メーカーも省エネ性能を向上させているので一概にはいえないが)。

「エアコン期間消費電力量の推移」※期間消費電力量は冷暖房兼用・壁掛け型・冷房能力2.8kWクラス省エネルギー型の代表機種の単純平均値。電気料金は1kWhあたり27円換算

■省エネのポイントは「センサー機能」と「気流制御」

最新エアコンの省エネ性能に大きく寄与している機能として注目したいのが、「人感センサー」をはじめとするセンサーを利用した省エネ機能だ。人感センサーや赤外線センサー、カメラセンサーなどを使って、人のいる場所や活動量、間取り、天井や床、壁の温度などさまざまなものを感知し、効率よく部屋の温度をコントロールする。

三菱電機の「霧ヶ峰シリーズ」やパナソニックのエアコンが採用する「温冷感センサー」などは、部屋にいる一人ひとりの「暑い」「寒い」という感覚を見分けて風を吹き分ける機能を搭載している。

三菱電機の「霧ヶ峰シリーズ」が搭載する「ムーブアイ極」は高精度赤外線センサーによって体の温度をチェックするだけでなく、温度の感じ方まで検知するという(三菱電機のWebサイトより)

これらのセンサー機能は省エネ性能を向上するのに役立つだけでなく、部屋にいる人の快適性向上にも大いに寄与するので、しっかりと機能の有無をチェックしたい。

いくら高性能センサーによって「暑く感じている人」「寒く感じている人」が判明しても、的確に吹き分けられる気流制御機能がなければ意味がない。そこで各メーカーが売りにしている機能・性能の一つが「気流制御」だ。各社とも「つつみ込む気流」(シャープ)や「サーキュレーション気流」(ダイキン工業)、「ロングワイド気流」(パナソニック)、「プレミアム天井気流」(日立)などさまざまなネーミングで気流が遠くまで届くことをアピールしている。

シャープの「つつみ込む気流」(シャープのWebサイトより)

最新のモデルで特に注目したいのが三菱電機の「霧ヶ峰FZシリーズ」と富士通ゼネラルの「ノクリアXシリーズ」だ。三菱電機の霧ヶ峰FZシリーズは2基のプロペラファンを搭載する「パーソナルツインフロー」を採用。エアコンの横幅いっぱいに広がる一般的な「ラインフローファン」ではフラップ制御だけで吹き分けを行っているのに対し、左右のファンの風量を制御することで左右の完全な吹き分けが可能になった。これはかなりの進化ポイントだ。

三菱電機の「霧ヶ峰FZシリーズ」は本体上部にプロペラファンを2基搭載した「パーソナルツインフロー」を採用している

ノクリアXシリーズは2013年モデルから、室内機の両サイドから風を送り出すことでより細かく気流を制御する「DUAL BLASTER」を搭載。冷風と室温気流、温風と室温気流といったように温度と速度の異なる気流を組み合わせた「ハイブリッド気流」を採用している。

■除湿・加湿機能も重要

エアコンのメーン機能といえば冷房と暖房だが、ジメジメする梅雨の時期などには除湿機能も重要だ。除湿は基本的に部屋の空気を冷やして結露させて取り除くため、室温が下がってしまう。

そこで搭載されているのが室温を下げずに除湿する、日立の「カラッと除湿」をはじめとする「再熱除湿方式」だ。ただしこの方式は除湿した空気を温め直して送り出すことから、冷房などに比べて消費電力が高くなってしまうので注意したい。

再熱除湿方式の仕組み(日立のWebサイトより)

そこで各社とも、部屋の温度をそれほど下げずに除湿する機能を搭載している。シャープは「コアンダ除湿」、ダイキン工業は「さらら除湿(ハイブリッド方式)」、東芝は「おすすめ除湿」、パナソニックは「快適除湿」、富士通ゼネラルは「ソフトクール除湿」、三菱電機は「プレミアム除湿」とそれぞれネーミングしている。日立の場合、暑いうちは室温中心にコントロールして涼しくしながら、室温が下がったら湿度中心にコントロールして冷えすぎを抑える「健康冷房 [涼快]」モードを搭載している。各社とも、衣類乾燥に特化した強力な除湿機能も搭載しているので、こちらも要チェックだ。

乾燥する冬の時期に便利なのが、ダイキン工業の「うるさら7シリーズ」が搭載する「うるる加湿(無給水加湿)」機能だ。これは室外機から空気中の水分を室内機へ取り込み、給水せずに部屋を加湿するというもの。外気温度-10℃以下、外気相対湿度が20%以下の場合は加湿運転できないとのことだが、2.2kWクラス(6畳モデル)で450ml/h、9kWクラス(29畳モデル)では870ml/hと、加湿量はかなりのもの。冬の暖房にエアコンを使いたい、でも部屋が乾燥するのはイヤという人はうるさら7シリーズがおすすめだ。

ダイキン工業「うるさら7シリーズ」の「うるる加湿(無給水加湿)」機能の仕組み(ダイキン工業のWebサイトより)

■自動お掃除機能は省エネにも寄与

エアコンのお手入れをラクにしてくれる「自動お掃除機能」も注目のポイント。自動お掃除機能はエアコンのフィルターに付着したホコリを自動的にかき取ってダストボックスに収納してくれるというもの。1年に1回ほどダストボックスにたまったホコリを捨てるだけでいいのだ。

経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ」によると、フィルターが目詰まりしているエアコン(2.2kW、6畳用モデル)とフィルターを清掃したエアコンで比較すると、フィルターを清掃したエアコンは、年間で31.95kWh(約863円)の省エネにつながるという。こまめな掃除を心がけるか、自動お掃除機能搭載モデルを選ぶことをおすすめしたい。

フィルターが目詰まりしているエアコン(2.2kW、6畳用モデル)とフィルターを清掃したエアコンを比較。フィルターを定期的に清掃すると年間で31.95kWh(約863円)の省エネにつながるという(経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ 2015年冬版」より)

自動お掃除機能の手入れの頻度の目安は1年に1回程度(富士通ゼネラルの最新モデルは約5年、三菱電機は同じく約10年に1回とうたっている)だ。ちなみにパナソニックはかき取ったホコリを室外機から外に排出する「自動排出方式」を採用したモデルもラインアップしている。

(IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志)

[日経トレンディネット 2016年7月7日付の記事を再構成]

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