ヤマカズ21、「4楽章の交響曲」の構造くっきり
クラシックCD・今月の3点
山田和樹指揮日本フィルハーモニー交響楽団
今年37歳の山田和樹は20世紀の巨匠、山田一雄(1912~91年)のニックネーム「ヤマカズ」を引き継ぎ?、「ヤマカズ21」と自ら名乗る。「先代」はマーラーの弟子だったクラウス・プリングスハイムが東京音楽学校(現在の東京芸大音楽学部)のオーケストラと、師の交響曲に次々と挑んだ時代に在学し、第6番の日本初演にも打楽器奏者で加わっていた。対する「21」は正指揮者を務める日本フィルと東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで番号順にマーラーの交響曲全曲演奏に取り組み、今年3月末で第6番に至った。
青ひげ公=マティアス・ゲルネ(バリトン)、ユディット=エレーナ・ツィトコーワ(メゾソプラノ)、吟遊詩人=アンドラーシュ・パレルディ(語り)、小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ
妻たちを次々と城に幽閉する青ひげ公、その4番目の妻となり、やがて夜の世界をつかさどるユーディット。登場人物2人だけ、1幕1場のハンガリー語オペラは1918年の初演だ。バルトークの深く鋭い音楽に男女の意思の悲しいまでのすれ違い、死の匂いの生々しさがからみ合っての緊張が1時間、まるで途切れない。2011年のサイトウ・キネン・フェスティバル松本(現在のセイジ・オザワ松本フェスティバル)では総帥、小澤の闘病後初のオペラとして「青ひげ」を選び、ダンサーの金森穣を演出・振付に抜てきした。小澤は結局、全4公演のうち2公演しか指揮できなかったが、名人オーケストラと入念なリハーサルを重ね、声に力のある歌手を得て、全身全霊の没入。圧倒的な音響を現出させ、鬼気迫る世界を描き尽くした。(ユニバーサル)
ペーター・レーゼル(ピアノ)
旧東独を代表する名手だったレーゼルは、東西ドイツ再統一から17年を経た2007年、日本で30年ぶりのリサイタルを開き「遅れて現れた巨匠」の真価を遺憾なく発揮した。以前は東独政府が亡命を恐れるあまり、単独の日本ツアーを認めず、いつもオーケストラと来ては協奏曲を弾いていた。「閉ざされた世界」で体験した様々な思いも薄らいだのか、最近は一段と自己を開放、自由自在の境地に達しているが、あくまで作品自体の持ち味に語らせる基本姿勢に変わりはない。アルバムタイトルとなったドヴォルザークの「ユーモレスク」をはじめ、ショパンの「子犬のワルツ」、J・S・バッハの「主よ、人の望みの喜びを」(レーゼル自身の編曲)、ドビュッシーの「沈める寺」、スクリャービンの「左手のための2つの小品」、アルカンの「舟歌」など、洗練の極みの鑑識眼で集められた17曲は宝石のように輝く。(キング)
(コンテンツ編集部 池田卓夫)
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