アート&レビュー

音楽レビュー

ヤマカズ21、「4楽章の交響曲」の構造くっきり クラシックCD・今月の3点

2016/6/26

今年3月26日、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで日本フィルとマーラーの「交響曲第6番《悲劇的》」を演奏する山田和樹(撮影=山口敦、写真提供=Bunkamura)
マーラー「交響曲第6番《悲劇的》」
山田和樹指揮日本フィルハーモニー交響楽団

今年37歳の山田和樹は20世紀の巨匠、山田一雄(1912~91年)のニックネーム「ヤマカズ」を引き継ぎ?、「ヤマカズ21」と自ら名乗る。「先代」はマーラーの弟子だったクラウス・プリングスハイムが東京音楽学校(現在の東京芸大音楽学部)のオーケストラと、師の交響曲に次々と挑んだ時代に在学し、第6番の日本初演にも打楽器奏者で加わっていた。対する「21」は正指揮者を務める日本フィルと東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで番号順にマーラーの交響曲全曲演奏に取り組み、今年3月末で第6番に至った。自分で指揮するまで「この曲の生演奏を聴いたことがなかった」のを逆手にとって一切の先入観を排し、ひたすら楽譜と向き合い、極めて新鮮な響きを獲得した。結果、表題からくるドロドロした情念よりも、ハイドン以来の4楽章形式の交響曲の構造がくっきり浮かび上がった。(オクタヴィア)

バルトーク「歌劇《青ひげ公の城》」
青ひげ公=マティアス・ゲルネ(バリトン)、ユディット=エレーナ・ツィトコーワ(メゾソプラノ)、吟遊詩人=アンドラーシュ・パレルディ(語り)、小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ

妻たちを次々と城に幽閉する青ひげ公、その4番目の妻となり、やがて夜の世界をつかさどるユーディット。登場人物2人だけ、1幕1場のハンガリー語オペラは1918年の初演だ。バルトークの深く鋭い音楽に男女の意思の悲しいまでのすれ違い、死の匂いの生々しさがからみ合っての緊張が1時間、まるで途切れない。2011年のサイトウ・キネン・フェスティバル松本(現在のセイジ・オザワ松本フェスティバル)では総帥、小澤の闘病後初のオペラとして「青ひげ」を選び、ダンサーの金森穣を演出・振付に抜てきした。小澤は結局、全4公演のうち2公演しか指揮できなかったが、名人オーケストラと入念なリハーサルを重ね、声に力のある歌手を得て、全身全霊の没入。圧倒的な音響を現出させ、鬼気迫る世界を描き尽くした。(ユニバーサル)

ユーモレスク~ピアノ小品集2
ペーター・レーゼル(ピアノ)

旧東独を代表する名手だったレーゼルは、東西ドイツ再統一から17年を経た2007年、日本で30年ぶりのリサイタルを開き「遅れて現れた巨匠」の真価を遺憾なく発揮した。以前は東独政府が亡命を恐れるあまり、単独の日本ツアーを認めず、いつもオーケストラと来ては協奏曲を弾いていた。「閉ざされた世界」で体験した様々な思いも薄らいだのか、最近は一段と自己を開放、自由自在の境地に達しているが、あくまで作品自体の持ち味に語らせる基本姿勢に変わりはない。アルバムタイトルとなったドヴォルザークの「ユーモレスク」をはじめ、ショパンの「子犬のワルツ」、J・S・バッハの「主よ、人の望みの喜びを」(レーゼル自身の編曲)、ドビュッシーの「沈める寺」、スクリャービンの「左手のための2つの小品」、アルカンの「舟歌」など、洗練の極みの鑑識眼で集められた17曲は宝石のように輝く。(キング)

(コンテンツ編集部 池田卓夫)

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

演奏者 : 日本フィルハーモニー交響楽団 山田和樹
販売元 : オクタヴィアレコード
価  格 : 3,780円 (税込み)

バルトーク:歌劇「青ひげ公の城」

演奏者 : 小澤征爾
販売元 : ユニバーサル ミュージック
価  格 : 3,240円 (税込み)

ユーモレスク ~ ペーターレーゼル ピアノ小品集2

演奏者 : ペーター・レーゼル
販売元 : キングレコード
価  格 : 3,456円 (税込み)

アート&レビュー 新着記事

ALL CHANNEL