現代音楽の巨匠P・グラス、村上春樹の訳詩とコラボ
現代音楽の巨匠として知られる米国の作曲家、フィリップ・グラスが今月4、5日、すみだトリフォニーホール(東京都墨田区)で公演する。今年79歳となったグラスの来日は2005年以来11年ぶり。4日には人気作家・村上春樹が翻訳した詞とコラボレーションする企画も用意されている。3日、公演に先立ち記者会見を開いたグラスは「出演者の皆さんと一つの愛情を感じながら演奏できるのは光栄」と、意欲をみせた。
グラスは4日午後2時・午後7時の公演「THE POET SPEAKS」で、「ニューヨーク・パンクの女王」の異名を持つ詩人・歌手のパティ・スミスと共演。2人が生前親交を持ち、今年生誕90年を迎えた米国の詩人、アレン・ギンズバーグ(1926~97年)とスミスの詩をスミス自身が朗読し、グラスがピアノ音楽をつける。
ギンズバーグは作家ジャック・ケルアックなどと並び、米国で若者から熱狂的な支持を集めた「ビート世代」の代表的な詩人。文学や音楽を通じ、政治や社会の変革を呼びかけた。グラスはギンズバーグについて「彼の存在によってカウンターカルチャーがカルチャーそのものになった。私に大きな影響を与えた」と語る。
今回、ステージ上のスクリーンには、村上と翻訳家の柴田元幸によるギンズバーグとスミスの詩の日本語訳(新訳)が映し出される。スミスが村上作品の大ファンであることから、今回の企画が実現した。4日の公演ではこのほか、スミスの弾き語りやグラスのピアノ独奏も披露される。
一方、5日午後3時からの公演「THE COMPLETE ETUDES」では、グラスがジブリ作品の音楽で名高い作曲家の久石譲、グラスのアルバム制作に参加した経験があるピアニストの滑川真希と共演。グラスが90年代以降に取り組んだピアノ・エチュード全20曲を演奏する。今回ピアニストとして参加する久石は「グラスさんの曲はシンプルに書いているようですべてを包摂し、受け止めてくれる。いろんな演奏家がいろんなスタイルで演奏しても、グラスさんの音楽になる」と語った。
いずれの公演も、巨匠グラスが歩んできた偉大な足跡の一端をたどることができる、貴重な機会になりそうだ。
(文化部 岩崎貴行)
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