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「飛び出す絵本のよう」 辻仁成さん、ルノワール展巡る

2016/5/17

 8月22日まで国立新美術館(東京・六本木)で開催中の「オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展」では、両館が所蔵する印象派の巨匠・ルノワールの代表作が一堂に会した。オルセーとオランジュリーは同一法人ながら、両館の所蔵品がまとめて展示されるのは大変珍しい。光と色彩あふれる作品の数々は、同じく創造の現場に立つアーティストにどう映るのか。作家・辻仁成さんが会場を巡った。

 画家の最高傑作とされる「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」を前にして「まるで飛び出す絵本のよう」と辻さん。写真のように精緻な表現が主だった時代、絵画の中で躍動感を表現したのは「ルノワールの功績」と話した。

「浴女たち」の前でルノワール作品について語る辻仁成さん(4月、東京・六本木の国立新美術館)

 辻さんのパリ暮らしは10年以上にわたる。小説「海峡の光」で芥川賞を受賞した後、長編小説「白仏」がフランス語に翻訳され、フランスの五大文学賞の一つ「フェミナ賞」を受賞するなど、同国とその文化との縁は深い。

 住み慣れているはずのパリだが、辻さんは「決して美しいだけでないパリの街をここまで幸福そうに描いたのは、絵画の持つ役割をエンターテインメントとして捉えていたからではないか」と語り、改めて「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」から新鮮な印象を受けた様子だった。

「セーヌ川のはしけ」を鑑賞する辻仁成さん(4月、東京・六本木の国立新美術館)

 マネの弟ウジェーヌと画家ベルト・モリゾの娘を描いた「ジュリー・マネ」は辻さんお気に入りの作品だ。ルノワールが40代半ばの頃、画家が印象派の技法に疑問を抱き、新古典主義に近い画風へと変化していく時期に描かれた。印象派時代と違い、輪郭を強調した表情の描き方に「苦悩し葛藤する姿が感じられ、とても好きな作品」と語る。

 ロックバンド「エコーズ」のボーカリストとしてデビューし、現在は作家のほかに映画監督や演出家もこなす辻さん。ルノワールの絵画を読み解くにも、文学から美術にわたる多面的な視点が光っていた。展示では写実的な初期作品から晩年の大作まで、印象派と伝統の融合に向け挑戦を続けたルノワールの画業を体感できる。

文・写真 映像報道部 湯沢華織

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