ほおの筋肉意識し体操 ストレス解消にも効果
ほおの筋肉 意識し体操
素敵(すてき)な笑顔への第一歩は、顔の筋肉である表情筋を自在に動かせるようにすること。むくみやシワ、たるみの解消が期待される「顔ヨガ」が、実は笑顔作りにも効果があるという。
都内の顔ヨガ教室で講師をする間々田佳子さんは「最近は笑顔を作れない、硬い表情を改善したいという悩みを抱えてくる人が多い」という。教室の参加者は20~80代の女性や男性ビジネスマンたち。3月中旬の教室には18人が集った。
鏡片手に、間々田さんのポーズをまね、1時間半のレッスンに真剣に取り組んだ。間々田さんは「上の歯が8本見えるのが理想的。下の歯が見えると不自然に映る」と指摘する。
ほおが緊張すると口角が上がらず、自然な笑顔にならない。「顔には目や口、ほおのまわりなど多くの筋肉があり、表情はこれらが相互に働いて生まれる。筋肉を鍛えると、笑顔もコントロールできる」(間々田さん)。効果的なのは「おいしい顔」と「おだんごロック」のポーズだ。
初参加という20代の鈴木杏里さんは「普段意識しない顔の筋肉の動きが感じられた。こんなに表情が変わるなんて」と驚く。2度目という40代の東真衣さんは「変な顔をするのは難しいが楽しい。気分も良くなった」と話す。
「笑顔のためには、準備運動が必要。笑顔に自信が持てれば気持ちに余裕も出る」と間々田さん。毎朝、少しずつ顔の筋肉を動かすだけで、スムーズに口角も上げられるようになる。
顔ヨガで口角やほおが自在に動くようになっても、好感の持てる自然なほほ笑みへの道は厳しい。飛行機の客室乗務員のように、わざとらしくなく、きりっとした中にも気品と優しさを感じられる笑顔は、ビジネスの場に欠かせない。
「私たちの最初の笑顔で、お客様は信頼がおけるかどうか判断される」と話すのは、全日本空輸の客室乗務員でANAビジネスソリューション接遇&ビジネスマナー講師を務める申紅徳さん。ANA流笑顔のコツは「口角があがると同時に、目尻が下がっているかどうか」(申さん)。
紙などで口元を隠し、鏡に向かって笑ってみるという。「意外と目が笑っていないことに気付く。どれぐらい口角を上げると目も笑顔になるのか、自分で確認しておくのが大事」と申さん。自分が心から笑顔になれるような、楽しい思い出を決め、思い出すようにするのもいい。
ストレス解消にも効果
笑顔にはどんな効果があるのか。行動心理学に詳しい心理学者の晴香葉子さんは「笑顔でいると、自分がより楽しい気分になるフェースフィードバック効果がある。楽しいから笑顔を作るというより、笑顔を作るから楽しくなる」と話す。
さらにストレス解消効果も。「笑顔でいると自律神経のうち、副交感神経が活発化する。すると呼吸や脈拍、血圧などが緩やかになり、リラックスした状態になる」(晴香さん)。
「日本笑い学会」副会長で医師の昇幹夫さんは「笑いは健康に通じる」と話す。脳内の神経伝達物質であるセロトニンは「口角を上げて笑ったり、幸せを感じたりすると多く分泌される」(昇さん)。セロトニンが減ると、うつ状態になりやすいともいわれている。
笑顔は周りの人に連鎖することもある。「俗にあくびがうつる現象は、脳内にあるミラーニューロンと呼ばれる神経細胞が働くから。いわば鏡で、見た通りを再現。相手も自然と笑顔になる」(昇さん)。
笑顔は自分だけでなく相手も幸せにする。第一印象から素敵な出会いを演出しよう。
(ライター 巴 康子)
[日経プラスワン2016年4月16日付]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。