筋トレで、ずっと健脚 高齢者のジム通い広がる無理なくゆっくり/専門家と一緒に

筋力トレーニングに取り組む高齢者が増えてきた。いつまでも元気な体を維持して、健康でいるには筋肉を増やすことが欠かせないためだ。ただ、やり方を間違えると筋肉が付かないばかりか、ケガをしてしまうこともある。春は新しいことを始めるのにうってつけの季節。やり方を学んでみよう。
筋トレに取り組む高齢者が増えている(東京・新宿のシニア専用ジム)

「じゃあマシンの筋トレを始めましょう」。ここは東急スポーツオアシスのシニア専用ジム(東京・新宿)。インストラクターが呼びかけると、70歳を超えた会員たちが一斉にマシンを動かし始めた。「いっち、にっ、さん、し」と数えながら明るい顔で筋トレに励む。「ここで3年鍛えて、はっきりと筋肉が付いた」。長谷部勝美さん(84)はこう言って笑う。地下鉄の駅の上り下りもすべて階段を使う健脚ぶりだ。

何歳でも効果

筋肉の量は通常20代がピークだ。普通の生活を送っていると、毎年1%ずつ筋肉が減っていく。学生時代に鍛えていても、運動をやめてしまえば加齢による衰えは平等に訪れる。それでもトレーニングをすれば何歳でも効果が出る。海外の研究では90代の人でも筋肉が増えた。若い頃よりも成長はゆっくりだが、何歳になっても遅すぎるということはない。

しっかりウオーキングをしているから筋力も大丈夫――。こんな人も注意が必要になる。ウオーキングのような有酸素運動は、代謝を良くして脂肪を落とすには効果的だ。だが筋肉への刺激は乏しく、「ウオーキングだけで筋力を保つのは難しい」(石井直方東大教授)。もともと下半身は上半身よりも速いスピードで筋肉が衰える。

だから筋トレで最も鍛えるべきなのは太ももと尻の筋肉だ。こうした下半身が強くなれば、転倒しにくくなるほか、出歩くことが楽になり、活動の範囲も広がる。

足で重りを押す、ひざを伸ばす、ひざを曲げる、といった種目が中心だ。それぞれの種目を10回×3セット行う。2~3日休んで週2回のペースでできれば理想だ。毎日やると筋肉が疲れ切ってしまい、かえって筋肉が落ちることもある。

高齢者のトレーニングの原則は「無理なくゆっくり」だ。東京・新宿のシニア専用ジムで指導する高口江里子さん(49)は「運動をしていない高齢者はストレッチだけで骨折することもある。血圧の危険もあるので、軽い負荷をゆっくり上げるのがいい」という。

重りを約4秒かけて上げ、約4秒かけて下ろす。注意点は関節を伸ばしきらずに、筋肉にずっと力が入っている状態を保つこと。「筋肉が酸素不足になり激しい運動だと判断する。すると筋肉が付きやすい」(石井東大教授)

フォーム正しく

ゆっくりやるとフォームも確かめやすい。筋トレもゴルフや野球と同じ。正しいフォームが上達への近道だ。できるなら最初はジムに行ってインストラクターにフォームを教えてもらおう。大手フィットネスクラブの担当者は「昼間の時間帯は高齢者ばかりなので、初めての人でも気軽に来やすい」と話す。無料で見学や体験もできるところが多いため、近くのジムを一回のぞいてみよう。

ジムに行きにくいという人は、自宅でのスクワットから始めてみるといい。屈伸運動のように膝を前に出すとケガをしやすい。机に手をついて、イスから立ち上がるときのように、つま先の真上に膝がある状態が理想的だ。確実なフォームで3セットできるようになったら、重りを増やしたり、回数を増やしたりしてみよう。

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たんぱく質 十分に摂取

トレーニングと同じくらい大事なのが栄養だ。トレーニングで筋肉に刺激を与えると、体は成長ホルモンを出して筋肉を太くしようとする。しかし材料になる「たんぱく質」が無ければ筋肉をつくれない。

年を取って食事量が減ってしまうと、たんぱく質を十分取れていないことが多くなる。朝昼晩に、たんぱく質を多く含む肉や魚、大豆、卵、牛乳などをしっかり食べるほか、トレーニング直後にたんぱく質を粉末状にしたプロテインを取ることも有効だ。

筋肉を付けるには休養も欠かせない。しっかりと規則正しく、十分に眠ることが必要だ。次のトレーニングのときに疲れが残っているようだったら、無理をせずに休んだほうがいい。

(山崎純)

[日本経済新聞夕刊2016年4月14日付]