美術品オークションに参加したい

絵画や彫刻などを競り落とす美術品オークションが個人愛好家にも人気だ。競売というと数百万~数億円の印象が強いが、中には2万~5万円で買えるものも。作品が並ぶカタログや下見会だけでも一見の価値はあり、名画を買った気分に浸れる。芸術の秋、お気に入りの美術品探しに会場をのぞいてみてはいかが。

下見会で事前に品定め

パドルをオークショニアに示して入札する(東京都江東区のマレットジャパン)=写真 塩田信義

「こちらの油彩画は20万円から参りましょう。22万、24万……」。熱気のこもった会場でパドルと呼ぶ番号札が次々上がる。リズムよく価格を上げていくのはオークショニアと呼ばれる競売人。「36万円で落札します!」。カン! とハンマーで台を打つ音が響く。

9月中旬、マレットジャパン(東京・江東)が開いたオークションには絵画を中心に300点以上が出品された。最高落札額は3100万円で今井俊満の油彩画「赤い太陽」(1973年作)。落札額20万円以下の作品も60点近くあった。

同社の柏倉陽子取締役は「参加者は画商も多いが、個人愛好家たちが3割ほどいる」と話す。競売の前に出品作が見られる下見会は「美術館みたいな雰囲気」と人気。「色々な作品を一度に見られて楽しい」と、頻繁に訪れる母娘もいる。

色々な年代の絵が並ぶオークションの下見会場(東京都江東区のマレットジャパン)=写真 塩田信義

この数年、国内でオークション会社が増え、数万円から落札できる競売もある。SBIアートオークション(同)は2012年から現代美術の競売を開始。「10万円以下での落札も多く、30代女性も目立つ」(加賀美令マネジャー)。新人作家は評価が定まらず、画廊より安いこともある。

参加するには登録が必要。マレットジャパンは有料のカタログ請求で、SBIは本人証明書類の提出で登録できる。クリスティーズは銀行口座の残高照会が必要だ。出品内容は下見会のほか、カタログやオンラインでも公開される。

作品の多くは前の持ち主が何らかの事情で手放したもの。汚れや傷がある場合は作品の調査報告書に記されるが「実際の状態や印象を下見会で確かめた方がいい」と加賀美さん。初心者でも、スタッフに好みや予算を伝え相談してみよう。

落札額の目安は、世界の最新取引額を基に専門家がつける予想落札価格だ。下限と上限で示される。

会場で競り合うほかに電話や書面、オンライン入札もある。1点の落札にかかる平均時間は数十秒ほど。熱中しすぎて予算を大幅に超えないように注意したい。落札額のほか、手数料(国内なら10~15%)を含めて予算を立てよう。

音楽ファン 喜ぶ企画も

今春、ピカソの絵画が約215億円という美術品の史上最高落札額を記録した。舞台となったクリスティーズ・ニューヨークで戦後美術と現代美術を担当する井上光司さんは「中国など、世界中に有力な買い手が増えている」と話す。「現代美術に興味を持った収集家が、源流を知りたいと1920~60年代の作品に注目し、高値がついている」

日本の戦後前衛美術も海外で再評価され、ここ数年人気だ。マレットジャパンの競売で高額落札された今井俊満も50年代の芸術運動の旗頭で、高値が続く画家の一人。アートの最新動向をつかみ参加してみよう。

会場で競り合う自信がないなら、美術専門のネットオークションを利用するのも手だ。クリスティーズはサイト「オンラインオンリー・オークション」で、低価格帯の限定品を扱う。

ユニークな企画も増えている。SBIアートオークションは11月、アートと音楽をテーマに音楽ファンも楽しめる競売を開く。ビートルズが来日時に描いた絵、ミック・ジャガーを描いたアンディ・ウォーホルの版画などをそろえる。お気に入りが見つかるかもしれない。

(柳下朋子)

[日経プラスワン2015年10月3日付]

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