「ネット店舗」手軽に開設 支援サービスが急拡大
ネット関連サービス会社、ブラケット(東京・渋谷)は無料のオンライン出店支援サービス「ストアーズ・ドット・ジェーピー」を展開している。サイト開設までの手続きは極めて単純だ。店舗のURLを決めて、メールアドレスとパスワードを打ち込むだけ。これで店舗が開設される。あとはサイトに商品の写真や説明、値段などを打ち込めば、準備は完了してしまう。
決済機能は搭載済み
クレジットカードなどの決済機能は初めから搭載されており、カード会社との面倒な手続きも不要。同社PRマネージャーの千田絵美さんは「オンライン店舗を作ろうとすると何万円もかかるが、ブログをつくるのと同じくらいの手軽さで開業できる」と語る。サービスを開始した昨年8月から現在までで、出店数は6万以上に膨らんだ。
乳幼児向けのニット帽などを製作している望月美保さん(32)は今年8月、ストアーズ・ドット・ジェーピーのサービスを利用してオンライン店舗を開設した。重宝しているのが、月980円で利用できる有料サービスだ。販売できる商品の数が無制限になるほか、アクセス解析機能が便利という。
サイトを訪れる人がどのような言葉で検索してたどり着いたか分かるので、「その言葉をサイトに入れたらアクセス数が一気に増えた」と話す。開業当初は月1万~2万円程度だった売り上げも今では5万円まで増えてきた。
東京・麻布で豆菓子店を運営する落合崇さん(38)は、1年前に同社のサービスを使ってオンラインストアを開業した。店舗が表通りに面していないため、集客力を高めるためだ。「小規模な店にとっては無料で始められる点は大きい」と語る。サイトを見た地方の客も店舗を訪れるようになったという。
ストアーズ・ドット・ジェーピーと並んで店舗数を伸ばしているのが、オンライン店舗開設支援サービス会社のBASE(東京・港)だ。サービス開始は昨年秋だが、店舗数は6万弱に達した。BASEの売りは「全てのサービスが無料」(鶴岡裕太・最高経営責任者)な点だ。
オンラインストア開設までの流れはストアーズ・ドット・ジェーピーとほぼ同じだが、掲載できる商品数は追加料金なく無制限。商品の写真を撮影するサービスや、サイトへのアクセス数を確認できる機能も付いている。「将来も基本は無料を続ける」(鶴岡氏)といい、オークションなどの追加機能で収益を得る構想を持つ。
都内で革製のバッグや小物類を製作・販売する橋本太一郎さん(37)は、既存のオンライン店舗で定番商品を扱い、BASEのサイトでは実験的に作った商品を少数売るといった具合に使い分けている。
「サイトのシンプルさ、商品掲載のしやすさ、決済の手軽さが実験的な商品を売るのにちょうどいい」(橋本さん)。開設当初は月20万円程度だった売り上げも今では50万~70万円ほどまで増加。サイトで商品に興味を持った客が店舗を訪れることも多いという。
悪質な店舗を監視も
オンライン店舗支援サービスは以前からあったが、無料な点が受けて急速に普及した格好だ。だが、手軽さゆえ悪質な店舗が入り込む余地はある。BASEでは規約に反する店舗を見つけた場合は店を削除している。ストアーズ・ドット・ジェーピーも外部の企業に委託し、24時間体制で店舗を監視している。
また、個人であっても物を売る以上、特定商取引法や景品表示法、薬事法などの関連法規を守る必要がある。注意点をしっかり踏まえた上で利用しよう。
(経済部 小川和広)
[日本経済新聞夕刊2013年12月12日付]
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