専門家によると、両親がともに下肢静脈瘤だと90%の確率で発症し、どちらかが患者なら約30~60%の確率でなるという。遺伝的な要因を持たない場合は20%程度と考えられている。

下肢静脈瘤は自然によくなることはないので、むくみやだるさに悩まされている人は治療が勧められる。「静脈内で起きる血液の逆流を止めることが重要だ」(広川院長)

従来は太ももの静脈に細い針金を入れ、静脈を引き抜く「ストリッピング」と呼ぶ手術などが主流だった。全身麻酔もしくは下半身の麻酔をして実施し、3日~1週間程度入院する。効果が高い半面、手術後に痛みや腫れが生じることもあった。

そこで登場したのがレーザーを使って静脈を焼き、血管を塞いで血流を遮断する治療法だ。2011年に保険適用された。波長980ナノ(ナノは10億分の1)メートルのレーザーを照射する。傷痕が小さく局所麻酔で済む利点があり、日帰り治療も可能だ。ただ「レーザーが1方向にしか出ず、照射しすぎると黒く焦げ、最悪の場合は血管に穴が開く恐れがあった」と広川院長は話す。

今年、保険適用された2種類の手法は血管内治療の改良版だ。1つは波長1470ナノメートルのレーザーを使う方法だ。この波長は、これまでより焦げにくいという。レーザーが通る透明なガラス管の先端にプリズムがついており、周囲の全方向にレーザーが広がり、焼きむらができにくい工夫も加えた。

高周波を使う方法も認められた。先端に電熱線が付いたカテーテルを静脈に入れる。電気を流すと、電熱線がセ氏約120度まで達し、血管内を焼く。超音波で位置を確認しながら少しずつ引き抜き、焼く治療を約10回繰り返す。

■手術痕も小さく

東京医科歯科大学の井上芳徳・血管外科科長は「これまでの血管内レーザー治療に比べて痛みや皮下出血などは起こりにくくなった。患者の負担も減った」と新手法の利点を強調する。傷痕が小さく、入院が必要ない点は従来通りだ。1時間程度の手術で、その日に歩いて帰れる。

ただし注意点もある。治療法が進化しても、手術のリスクがゼロになるわけではないからだ。広川院長は「患者がつらさを訴えていれば手術をするが、血管が浮き出ているだけで症状がなければ手術は勧めない」と話す。治療にあたっては患者と医師が十分に話し合って決めることが大切だ。

(八木悠介)

[日本経済新聞夕刊2014年11月14日付]

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