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健康・医療
病気・医療

2021/9/1

病気・医療

「さまざまな事柄を1冊にまとめ、読み返すことは介護と冷静に向き合う近道」。東京都小金井市の支援団体、NPO法人のUPTREE(アップツリー)は「認知症の家族のための介護者手帳」(A5判・100ページ、通販価格1870円)を発行する。阿久津美栄子代表理事は出費を記しておけば親族とのトラブル回避にもなると助言する。

介護を経験した自分たちの「あったらよかった」の思いを5年前、手帳の形にした。「できることリスト」は通所や訪問サービスを上手に使い、息抜きの時間を確保するよう促してくれる。終末(みとり)期までを4つの段階に分けて介護の流れを見える化したロードマップは、利用者からも「ゴールを受容し、ステージごとの準備を立てられる」共感を得ている。

市政情報を加えてこういった手帳をカスタマイズし、地域福祉で活用する自治体も現れた。小金井市はアップツリーと2年前に市民版を作り、21年春には第2弾「男性のための介護者手帳」を発行した。東京都調布市は地元の支援団体と共同で22年度中にも独自の手帳を発行する。孤立しがちな介護者の元に届け、何をどう進めればいいかを示し「1人ではない」という安心感を与えようと取り組む。

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自治体や企業もサポート

埼玉県は20年春、ケアラー(介護者)を支援する全国初の条例を制定した。介護体験者の声を動画でホームページ(HP)で配信中で18歳未満の「ヤングケアラー」編もある。20年の県の調査で県内の家族介護者の3人に1人が「介護を頼める人がいない」と回答し、孤独な介護の断面が浮き彫りに。県は11月を「ケアラー月間」に定め、支援団体の取り組みなどを新設のHPで情報発信する。

東京都内では自治体の介護者支援事業として「家事サービス代行」(杉並、新宿区など)や「介助実技の訪問レッスン」(葛飾区)、「24時間電話相談」(江戸川区)などがある。埼玉県の条例制定を機に各地で介護者支援の機運は高まっており、地域と企業の協働も生まれている。SOMPOホールディングスは支援アプリを開発し、福島や石川県、堺市などのモデル地区で年内にも無償配布する。

(山本啓一)

[日本経済新聞夕刊2021年9月1日付]

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