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親の介護で後悔しない4つの心得 ゴールは何なのか?

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

突然、親の介護と向き合うことになった子供が離職するケースも少なくないなど、介護には負担、不安、悩みがのしかかる。親に長生きしてほしいと思う心とは裏腹に、「いつまで介護が続くのだろう」と考えてしまい、大きなストレスを抱えることにもなる。介護者をサポートする活動をしている東京・小金井市のNPO法人UPTREE(アップツリー)代表の阿久津美栄子さんに、前回(「突然くる親の介護 翻弄されないための6つの基本とは」)に引き続き話を伺った。阿久津さんは30代で突然、両親の介護をすることになった。今回は、阿久津さん自身の経験と共に、後悔しない親の介護について聞いた。

――阿久津さんは38歳で急に介護者となられたそうですね。子育てをしながら介護をされたそうですが、大変なストレスだったと思います。

阿久津美栄子さん(以下、阿久津さん) 突然、両親を立て続けに介護することになり、知識が全くなく翻弄されていました。子育てもしていたので、自分の時間がなくなり、ママ友に介護の話をしたものの、誰にも自分のつらさが伝わらず、そのうち家族にも理解してもらえないという状況に陥りました。

遠距離介護だったので毎日親に会うわけではなかったのですが、子供が休みのときに1カ月親の家に滞在するなどしていて。それを繰り返していたら、自分の感情をコントロールすることができなくなっていったんです。

そうした状況下で唯一の気晴らしは、当時していたアルバイトでした。介護のことを考えずに仕事に集中しているときが唯一精神的に楽だったんです。でも、あるとき、仕事帰りにコンビニエンスストアで買い物をしたら、単純なお金の計算ができなくなっていた。自分の能力の限界を超えていて、脳がキャパシティオーバーになっていたんですね。だから、当時は、買い物をするときはいつも、小銭を出すのではなく、1000円や1万円札を出して支払いをしていました。

介護者からよく聞くのが、味覚障害です。色々な症状がありますが、何を食べても苦いと感じるようになる人が多い。私も味覚障害が起きましたが、私の場合、甘く感じました。甘くてしょうがない。こうした障害を当たり前に耳にするぐらい、介護者はストレスを抱えます。経験がないことに加え、いずれは相手の死に直面する。でも、いつ終わりが来るかは分からない。先が読めないことへのストレスは計り知れません。

介護には必ず「ゴール」がある

――確かに、子育てと違い、介護はいつ終わりが来るか分からないのがストレスだとよく言われますね。

阿久津さん 自分が経験して初めて分かったのは、介護には必ずゴールがあるということです。当たり前のことですが、介護をしているときはそれが見えない。「死」を見ないふりをしてしまう。私の場合もそうでした。うまくいかなかった介護の典型的な例なんです。

UPTREEでは、介護の初期から看取り期に至るまでの「介護ロードマップ」を作成しています。混乱期、負担期、安定期、看取り期と4つのステップに分けていますが、介護のゴールは看取り、つまり死別だということを意識すると、時間が無限ではないと分かる。すると、その時間を大切にしようと思えるんです。

ゴールを意識しないと、先が見えない時間と戦うことになり、「毎日なんで私がこんなことをやらなきゃいけないの」となる。終わりが来ることをしっかり意識できれば、初動の混乱期にも客観的になれます。

「介護ロードマップ」を意識してみる

 UPTREEでは企業研修を行っているのですが、そこで話すのが、「介護休業」と「介護休暇」の違い。ステップ1の混乱期に、「ああ、もうだめだ、自分の時間も取れないし、仕事もできない」と介護休業(対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できる制度)を取る人が多いのですが、そうではなく、初期にはむしろ介護休暇(対象家族が1人の場合、年5日まで休暇を取得できる制度)を使ったほうがいいということです。

というのも、ロードマップ全体から見れば、介護初期は親が自立した状態で介護できる時期だからです。介護休業は最後の看取り期にこそ使う。そうして、親と一緒にゆっくり過ごすことを勧めています。

介護休業と介護休暇の違い

――介護のゴールを意識することで、どう変わるんでしょう。

阿久津さん 介護のゴールを意識していないと、なんとか生きさせようと、介護者は、介護される本人がやりたくないことまでやらせようとしてしまうものです。時に行き過ぎてしまい、無意識のうちに相手を"支配"するような状況になったりする。なお、介護虐待の加害者は、男性の方が多いことが分かっています[注1]

[注1]厚生労働省による2019年度の「『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」によれば、養介護施設従事者などでは男性が虐待者全体の52.3%、養護者(家族など)では息子と夫が全体の61.5%を占めた。

"よかれ"と思って行うことが、虐待につながるケースも

――実際にどのように、親を無意識に支配してしまうのでしょう。

阿久津さんあくまで親を思い"よかれ"と思って行うことが、時にやり過ぎだと後で気づくことがあります。見守りの目的で親の家にカメラを設置する際、心配のあまり、親のプライバシーをあまり考慮せずに台数を増やしてしまったりするケースもあるでしょう。愛情があるからこその行動なのですが、初めての介護では一生懸命であるがゆえに、このような行動をすることがあるのです。

実は、私が親の介護に入る前に父が母の面倒を見ていた時期があり、そのときの父も、母を無意識に支配しようとする傾向がありました。

がんを患っていた母が、介助がないとご飯が食べられず、父が毎日必ず病院に行きご飯を食べさせていたときがあるのですが、母はある日、食事を食べたくないと口を開かなくなったんです。でも父は、ご飯を食べなければ死んでしまうと考え、母の口を無理やり開けてご飯を入れ、ぎゅっと口を閉めた。私も違和感を持ちながら、「確かに食べなければ死んでしまうかも」と漠然と思っていたのですが、そんな状態が数カ月続く中、ある日実家に電話すると、父が「今日は満足した」と言ったのです。「どうして?」と聞いたら、父は「母に食事を全部食べさせられたから」と返した。「食べてもらえた」と言うなら分かりますが、「食べさせられた」なんて自分が満足しているだけではないか、と大げんかになりました。

でも、そこまで極端ではなくても相手によかれと思いやってしまったことは、私だってあります。元気になってほしいからと思うあまり、無理やり自己流のリハビリテーションをするようなこともありました。介護者は独善的にならないよう、気を付けなくてはいけない。だから、親が元気なうちに、どんな介護をしてほしいか聞いておく。特に認知症となると、後から相手の希望を聞けなくなりますから。

――親が何を望むかを事前によく聞いておくことが重要だと。

阿久津さん そうですね。誰に看てもらいたいか、どういう医療処置をしてほしいかといったことから、どう死にたいかまで、元気なうちに伝えてもらい、本人の要望を中心にした介護態勢に入るのが理想です。もちろん、そうした意思を全部伝えてもらっていても「全部希望通りにはできなかった」と後悔する介護者もいる。でも、ベースが何もないと、すべての責任が、介護者の肩に重くのしかかってしまいます。

厚生労働省も近年、アドバンス・ケア・プランニング(ACP、通称・人生会議)という取り組みの推進を始めました。人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族や医療・ケアチームなどと話し合おうという内容です。人がどう人生を終えたいかは、自分自身が決める。家族も医師もジャッジしない。それが理想だと思います。

両親の介護と看取りを経験して、私自身がどう死ぬかについても、家族に伝えておかなければと痛感しました。だから、娘には常に「明日死ぬかもしれないから」と言って、葬儀はこうしたい、遺影はこうしたいなどと話しています。娘は最初、聞きたくないと言っていましたが、今は「最後のお葬式で流す写真集作ろう」なんてアイデアまで出してくれます(笑)。自分の意思を伝えておかなければ、結局、残された側がかわいそうなんです。逆にどうしたいかを聞いておけば、どうしてほしかったんだろう、これでよかったんだろうかと思い悩むことがない。死は、誰にでも当たり前に訪れることですから。

――介護が必要なほど弱った親には、人生を終える話は持ち出しにくそうです。

阿久津さん そうなんです。元気なときじゃないと、なかなかできない話ですよね。そもそも、子供から親に終末期の話をすると、「今話すことじゃない」と突っぱねられることが多い。だから、お勧めは、子供がまずエンディングノートを書いてみること。判断しなければいけないことが多く、意外にさっと書けないものです。でも、書けないなりに、「こんなの書き始めてみたけど、うまく書けなかった」と親に見せると、じゃあ、自分もやってみようかという気持ちになる。ぜひ、書いてみてください。

――阿久津さんは、介護に関するさまざまな事柄を記録する「介護者手帳」を付けることも勧められています。

阿久津さん 親の状態を記録したり、家族で話し合い誰が何を担当するかを明記したり。記録することで、介護にかかわる人全員と情報を共有でき、介護者は主観的にならず客観的に介護を見られます。書くことで手が足りない部分が見えてきたら、専門職の人に助けてもらうなど、必要な態勢を整える手助けとなります。そもそも主介護者はたとえ兄弟であっても、なかなか言葉では「これをやってほしい」と言えないもの。でも、手帳に書いておけば、それを見て「これは自分がやろう」と言ってくれたりする。また、各自がどんなことを負担するか明記しておけば、「私だけに負担がくる」「いや、僕はこんなにやった」といった感情的なトラブルも避けられます。

介護にかかるお金も記録しておくことが大切です。ちょっとした金額でも負担をしたら必ず書いておくこと。少額でも加算されるとそれなりの金額になりトラブルのもととなります。

その上、介護者手帳に書かれたことはやがて思い出に変わり、親が亡くなった後のグリーフケアにもなる。書くことはとても大事なのです。

(ライター 大塚千春、図版制作 増田真一)

[日経Gooday2021年6月11日付記事を再構成]

阿久津美栄子さん
NPO法人UPTREE代表。1967年長野県生まれ。自身の介護の経験から、介護者をサポートするNPO法人UPTREEを2013年に立ち上げる。企業研修も行うほか、2019年にはLINEの公式アカウント「介護あっぷあっぷくん」をスタート。介護初心者向けに、介護の基本的な情報、介護保険の仕組みなどを紹介するほか、チャットボット(AIによる自動応答サービス)も導入している。UPTREEとして、介護の記録をサポートする「認知症の家族のための介護者手帳」も発行。

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