2021/8/26

治部煮の原型は「くわ焼き」で、豊臣秀吉の兵糧奉行だった岡部治部右衛門が朝鮮半島から伝えたという説がある。一方、金沢市の青木クッキングスクールの理事長、青木誠治さんは西洋料理が影響したという立場だ。

「キリシタン大名の高山右近が金沢に26年間住んだ。金沢にポルトガルの宣教師らが出入りし、原型となる料理を伝えた可能性がある」。ポルトガルには鴨肉をベースにした料理があり、肉の臭みを消す役割のホースラディッシュの代わりにワサビが使われたという。

おわんの柄も楽しむことができる(四季のテーブルのじぶ煮)

スクールにある郷土料理店「四季のテーブル」でも「じぶ煮」が味わえる。治部としないのは、名称は「じぶじぶ」という擬音語が由来ともいわれるからだ。鴨肉、すだれ麩、シイタケ、ホウレンソウなどが入る。

校長の青木悦子さんは「添えてあるワサビをお肉に付け、青味(ホウレンソウなど)は最後にいただくのがいい」と教えてくれた。肉や麩、シイタケ、野菜と丁寧に味わっていくと落ち着いた気分になる。

治部煮の今後について、青木校長は「地産地消のすばらしい食材を取り合わせ、家庭でもアレンジしてほしい」と強調する。店には、じぶ煮とリンゴをトッピングしたピザもある。時代とともに進化しそうだ。

<マメ知識>人気列車の弁当にも
 金沢と和倉温泉を結ぶJR西日本の観光列車「花嫁のれん」。車両全体で北陸の和と美を楽しめるとあって人気を集める。一部のメニューに治部煮が入っている。
 人気の「和軽食セット」の中に確かにあった。鶏肉やすだれ麩、シイタケ、ホウレンソウなどにワサビが添えてある。治部煮を使う理由について、JR西日本は「石川の郷土料理で最も知名度があるが、これまで弁当類にほとんどなかった。彩りもよくなる」と説明する。季節ごとに使う食材を変え、旅の魅力づくりにもつながる。

(金沢支局長 石黒和宏)

[日本経済新聞夕刊2021年8月26日付]