DXや女性活躍、積極的に進める

――主力の野菜ジュースでは高いシェアを持っていますが、新しい商品を生み出す難しさもありますか。

「近年ではスムージーが一番のヒット商品です。その前のヒット商品は野菜ジュースの『野菜生活』シリーズでした。『野菜生活』はベースをそれまでの野菜ジュースで使われていたトマトからにんじんに変えて飲みやすくしたことで一気に市場が広がりました。またトマトジュースも機能性表示食品制度ができたことで市場が伸びました。野菜ジュースは一番重要な領域なので工夫をしています。最近では大豆を混ぜた商品や糖質やカロリーを減らした商品なども作っています。主力カテゴリーで、『野菜をとる』という意味でも、もっと飲んでもらいたいので、開発にも研究にもとても注力しています」

――デジタルトランスフォーメーション(DX)についてはどのように取り組んでいますか。

「試験的にDXに関して様々な部署から若手を集めて新しい仕組みを検討しています。複数の部門の人間が集まり、新しいものをつくっていくのはダイバーシティ(多様性)的にも重要で、新しい成長のアイデアが出てくることを期待しています。また昨年にはデジタルマーケティング推進グループを設置し、量販店とお客様についてDXで何ができるか議論をしています。チラシで一律で販促するのではなく、スマホを通じたワン・ツー・ワンの販促などを実験的にやっています」

――ダイバーシティの観点では女性活躍にも力を入れていますね。

「長期のビジョンとして2040年ごろに社員の女性比率を50%まで引き上げることを目指している。まずできることは女性の採用数を増やすことで、新卒採用は6割が女性です。女性が継続的に働ける体制をさらに整えてきています」

(聞き手は日経MJ編集長 鈴木哲也)

山口聡 83年(昭58年)東北大農卒、カゴメ入社。10年執行役員、19年取締役常務執行役員。20年から現職。静岡県出身。60歳。趣味はランニングで、東京マラソンに出場した経験もある。
■家庭向け好調、海外では減損
 カゴメの2020年12月期連結決算(国際会計基準)は売上収益が前の期比1%増の1830億円だった。営業利益は106億円と同24%減った。野菜ジュースや家庭用トマトケチャップ、パスタソースは好調だったものの、ポルトガル子会社で減損損失を計上したことなどにより利益を下げた。21年12月期の売上収益は2%増の1860億円、営業利益は25%増の133億円を見込む。
 売上収益はこのところ伸び悩んでおり、主力の野菜飲料の拡販や新しい収益源の育成が欠かせない。全社的に取り組んでいる「野菜をとろうキャンペーン」を通じて野菜需要を喚起し、多様な食品の売上高拡大につなげることが必要だろう。
(篠原英樹)

[日経MJ2021年6月7日付]

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