19年の夏休みに三井不動産のインターンに参加した総合人間科学部4年生の神谷紗耶加さんは、故郷の秋田で就活中だ。
他大学の学生と街の活性化策を考えるなどしたところ、「参加前は東京で働きたいと漠然と思っていたが、地元に目を向けるきっかけになった」と振り返る。
上智大グローバル教育センターの高木航平さんは「2年生の段階で学問と社会とのつながりを考えることは、キャリアの検討だけでなく、専門分野の学びにも生きる」と、早期でのインターンの効用を語る。
新潟大学は創生学部の1年次の必修科目に「フィールドスタディーズ」を設けている。
学生が地元企業や自治体などで4週間研修するが、他のインターンには就業体験の機会がないなど、インターンの仕方はまちまちだ。そこで「あえてインターンという名称を使わなかった」と、担当の沢辺潤准教授(教育工学)は説明する。
フィールドスタディーズの狙いは、2年次以降に専門性を身につけるために、まずは学外での経験を通じ、産業や地域を理解することで社会課題を見つけ出せるようにすることだ。19年度には文科相が他大学のモデルとなる大学を表彰する「最優秀賞」に選ばれた。
今後は「受け入れ先を東京などの県外に広げるほか、業種も増やしていきたい」(沢辺准教授)という。
実務で学び試す、受け皿づくりを ESG投資の視点で
欧米でのインターンシップは、企業が優秀な学生を確保しようと長期でのプログラムを組むケースが多い。日本では文部科学、厚生労働、経済産業の3省が、インターンシップを「企業などの場における学生に対する教育活動」と位置づけ、採用活動に結びつけないよう求めてきた。
企業サイドには採用に結びつかないインターンは労が多く、利点が少ないとの声もある。一方で新型コロナウイルスの感染拡大で採用環境が大きく変化。経団連が中心となり、インターンからの直接採用を解禁する流れもできつつある。
教育ジャーナリストの後藤健夫さんは「大学で学んでいることが実務でどのように生きるかがわかる効果などを、大学生にもたらすことは将来の社会全体へのメリットにもなる」と語る。
就業体験の提供自体がまさにESG(環境・社会・企業統治)投資の一つになると捉え直してみてはどうだろうか。
(編集委員 木村恭子)
[日本経済新聞朝刊2021年5月12日付]