憧れの超高層ビルで検査から溶接まで 鹿島社長鹿島 押味至一社長(下)

念願かない超高層ビル「アクトシティ浜松」の現場を担当することになる
念願かない超高層ビル「アクトシティ浜松」の現場を担当することになる
■1991年、アクトシティ浜松(浜松市)の建設を担当する。

42歳のとき、入社時からの憧れだった超高層ビルの建設に関われることになりました。地上高213メートルのアクトシティ浜松です。当時の鹿島にとって最大の物件でした。別の現場で所長を経験していましたが、改めて勉強し直すつもりで鉄骨担当工事課長として挑戦することとなりました。

超高層ビルは通常、地下から最上階まで一続きの柱で支えます。しかしアクトシティは27階までのオフィスフロアと28階以上のホテルフロアで柱の間隔が変わる計画でした。中間に特徴的なはりを組み、その上に新しい柱を建てるという構造で、その成功の鍵は鉄骨の柱を正確に建てること。それが私の役目でした。

■鉄骨の溶接手順や製品検査で、発想や考え方が試される。

鉄骨は溶接すると伸び縮みするため、建築時にはひずみを考慮する必要があります。段階的に溶接しないと大きく変形するうえ、強風対策も欠かせません。技術研究所が持っていたデータを基に、溶接量や手順を実験しながら考えました。

工事計画の立案では、設計事務所など多くの関係者と協議する必要があります。経験のない量の鉄骨を使うため、10社以上に発注しました。一社一社駆けずり回って製品の検査もしなければならない。新しい経験の連続で、自分の発想や考え方が試されます。

上司からはよく「おまえは本当に人の話を聞かないな」と言われたものです。我が強いところがあるので「この方法がいい」と思うとそれに徹してしまいます。「はい」と言いつつ聞き流すこともありました。

時には意見が衝突しましたが、お客さんに良い建物をお渡しすることが大事だという点で全員が一致していました。本当に楽しい仕事でした。

■様々な利害関係者を束ね、指揮した経験が今に生きる。

無事に最上階まで建ったとき、屋上のヘリポートに集まってみんなで乾杯しました。アクトシティの周辺には当時高い建物がまったくなかったので、浜松の隅々まで見渡せました。あの時の眺めは最高でした。

超高層ビルの仕事では設計事務所の構造技術者や研究所の研究員、とび職や溶接工といった現場技能者の方々など様々な関係者が携わります。コミュニケーションを密にして、非常に多くの工程を取りまとめつつ工事を指揮する必要もあります。交渉の進め方や人員配置などを学び、基礎となる実力と自信が身に付きました。私にとって、会社員人生の転換点となる大きな仕事でした。

あのころ……

日本では1990年ごろから超高層ビルが増え、東京都庁第一本庁舎(東京・新宿)などが登場する。93年に竣工した高さ296メートルの横浜ランドマークタワー(横浜市)は、あべのハルカス(大阪市、2014年竣工、300メートル)に抜かれるまで日本最高層を誇った。

[日本経済新聞朝刊 2021年2月23日付]


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