これまで数々のヒット作を世に送り出したユニクロにとっても、ルメール氏との協業はとりわけ思いが強い。ユニクロは、ユニクロ ユーの「U」について「ユニクロの本質を表し、DNAにも根付くコレクションであることを表現している」と説明する。18年にはファストリがルメールブランドへの出資も実施。柳井正会長兼社長は同氏との協業を「本当に誇りに思う」とコメントしていた。
コンセプトは上質で革新的な「究極の普段着」
ユニクロ ユーは、ユニクロと同じく「ライフウェア(究極の普段着)」をコンセプトにしつつ、既存ラインとも異なる上質感が特徴。シーズンを重ねるごとに先駆的なアイデアを取り入れる革新性も評判だ。
例えば20年春夏でヒットとなったのが男性向けの「エアリズムコットンオーバーサイズTシャツ」。表面はコットンながら、裏面は吸湿や速乾性のある素材エアリズム。肌触りがよく、汗をかいてもすぐ乾く。生地に張りが出てしわにもなりくい。女性客にも人気で秋以降も継続販売した。
新素材の活用はさらに広がっている。20年秋冬は表地はコットンで裏地がヒートテックの商品を発売。21年春夏はエアリズムコットンの商品群を拡充し、女性向けTシャツのほか、ワンピースも展開する。ドレスなどに使われ光沢のあるサテンの様な「シャイニーレーヨン」を使ったワンピースも投入した。
消費者の要望に応える形で21年春夏からは子供向け商品も新たに扱い始める。
ユニクロ ユーからは様々な波及効果が生まれている。例えばユニクロ ユーが新たに展開する子供服では、ユニクロの子供服の開発現場からも前向きな声が聞かれる。「本体(ユニクロ)のキッズを完成させるために生きる。ユニクロ ユーを取り入れることで学び、本体をより洗練させることにつながる」。(グローバル商品本部の桜居純子リーダー)。
パリ発のユニクロ ユーの人気の高まりは、日本など他の開発現場にも刺激と切磋琢磨(せっさたくま)による創意工夫をもたらし、ユニクロ全体の活性化にもつながっていると言えそうだ。
(古川慶一)
[日経MJ 2021年2月5日付]
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