カジダンへの道 掃除・片付けは在庫管理の発想で
NPO法人コヂカラ・ニッポン代表 川島高之氏
快適に暮らしたいと思えば、掃除や片付けは欠かせません。ただこうした家事はやりがいよりも「やらなければ」という義務感が先に立ってしまいます。私にとっては子育てのやりがいを10だとすると、料理は4、掃除や片付けだと2程度に。だからこそ合理化で時間や手間を減らしながら成果を上げたい。家事でも「働き方改革」を追求してきました。ある意味、ビジネスの発想です。
例えば収納。必要な物を欠品させず、取り出しやすく、探す手間もかからないようにしたい。ビジネスで言えば、物品調達や在庫管理と同じです。台所では調味料をしまう場所を決め、しょうゆなら瓶を3本、賞味期限の近いものを手前に並べます。使い切ったらホワイトボードに書き込み、食材と一緒にまとめ買い。補充するときは一番奥へしまいます。購入した食材もリストにして張っておけば在庫が一目瞭然。夕食の献立も冷蔵庫を開かずに考えられます。欠品・手間・廃棄という3つのロスを大幅に減らせました。
本や衣類、CDも収納の位置を決め、ざっくりとジャンル分けもしておきます。CDならソウルミュージックは棚のこちら、ジャズはあちらといった具合。アーティスト名の五十音順などとこだわりすぎると続かないので、ある程度の分類にとどめるのが私には心地よく感じます。ただ収納スペース自体は増やさず、いっぱいになれば売ったり寄付したりします。
机の上にはほぼ物を置かず、妻には「事務所みたい」と言われます。片付いてはいるけれど、生活感やぬくもりに欠ける感じに映るのかもしれません。
合理的に進めたい。掃除でも発想は変わりません。左手ではたきをかけ、床に落ちたほこりを右手に持つスティック型の掃除機で吸い取っていく。とにかくシンプルに済ませます。拭き掃除は基本しませんので、単身赴任先から戻った妻が「表面的ね」と笑いながら補ってくれていますが…。料理のような「レギュラー」への昇格はまだ先ですね。
掃除や片付けをどこまでやれば満足するのか。妻と私ではどうしても求める感覚が違ってきます。やり方もどれが正解というのはなさそう。だからこそ互いに不満が募ることのないように、我が家ではこの家事、例えばここの片付けではどちらの意見を優先するか何となく決めています。妻も私のやり方を尊重してくれるからこそ家事が回っています。
仕事をしつつ、受け身ではなく主体的に家事に関わる「兼業主夫」の意識を持つこと。これが家族の満足度を高め、自らの義務感も減らすコツだと思います。自戒を込めてですが、「手伝おうか」は第三者的に聞こえるので禁句。まして家事をした後で妻に「どや顔」をするのも避けたいです。
1964年生まれ。慶応大学卒業後、三井物産に入り関連の上場会社社長に。家庭と仕事の両立を実践し「元祖イクボス」と呼ばれ、講演多数。著書に「職場のムダ取り教科書」など。
[日本経済新聞夕刊2020年10月27日付]
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