夫婦の家事分担、認識にズレ 望みは具体的に伝えて
生活コラムニスト ももせいづみ
先日パナソニックが30~40歳代の共働き夫婦を対象に実施した調査によると、夫婦間の家事分担について、夫側は「夫45:妻55」の割合で分担していると答えたのに対し、妻側は「夫23:妻77」。夫が半分近くやっていると思っていても、妻には2割程度にしか見えていないという結果だった。コロナ禍で在宅時間が長くなり、妻側では家事の疲れを感じる人の割合が上がった一方、夫側は逆に下がっていた。夫婦の間の家事感覚のズレは、思った以上に大きい。
ズレがあると、相手への不満もたまりやすくなる。「私がこんなにやっているのに、なぜ何もしないのか」と一方が思えば、「やらなきゃ怒る、やってもやり方が違うと怒る」と思う側もいる。「妖怪ナゼワタシバカリ」と「ドウスリャイインダヨおばけ」の不毛な戦いみたいなものが生まれて、切ない。
かくいう私は、子どもが10歳の時に離婚してシングルマザーになった。仕事と子育てと家事でさぞかし大変になると思ったら、家事だけはちょっと違った。1人でやるしかない状況では、「妖怪ナゼワタシバカリ」が心に出没しないのだ。それだけで、気持ちがフッとラクになった。不思議だ。
こうした分担認識のズレの他にも、「やってくれたけど思ってたのと違う」という方法のズレ、「今やってほしいのに後回しか」という時間のズレなどもある。
どうすればいいのか。これはもうコミュニケーションをとるしかない。特に「家事が終わった」と思うのがお互いどの状態なのかのすり合わせは大事だ。自分の基準を当たり前と思ってしまうと、ズレが生まれた時につい文句が出てしまう。伝える時は「お皿洗って」より、「お皿を洗って、最後に排水口のゴミを捨ててバスケットも洗ってね」など、具体的に伝えたほうがよさそう。ただ一度に大量のことは定着しづらいので、小さなアクションを2~3個ずつ地道に伝えていくのがよいようだ。
こうしたコミュニケーションには「アサーション(自身の意見を押し付けず、それでも意見を言うことは我慢しない、お互いを尊重したやりとりのこと)」の発想がとても大事だ。意見を伝え合いながら、できること、できないことをすり合わせて理解しあえるといいなと思う。冒頭の調査で妻が理想と思う家事分担の割合は「夫36:妻64」。平等に半分こしたいわけではなく、望んでいるのは23から36へ。あとたった13ポイント分の夫側の歩み寄りなのだ。
よいコミュニケーションがとれていれば「便利な道具や家電、外注も取り入れよう」という発想も自然に出てくるように思う。調査ではコロナ禍で家事の大変さの理解が深まった夫婦では仲がよいという回答が多かったとか。暮らしが変わりつつある今こそ、ぜひ家事のズレの修正を。
東京都出身。暮らし、ライフスタイルを主なテーマとするコラムニスト。本コラムを含め、自著のイラストも自ら手がける。新刊に「お弁当にスープジャー」(辰巳出版)、「新版『願いごと手帖』のつくり方」(主婦の友社)など著書多数。
[日本経済新聞夕刊2020年10月20日付]
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