三陽商会はスペイン発ブランド「ECOALF(エコアルフ)」を扱う「エコアルフ 二子玉川」(東京・世田谷)を5月にオープンした。再生素材を使うなど環境への配慮が特徴で、2020年春に国内展開を始めたばかりだ。ファミリー層が多い地域への出店でブランド認知度を高めるほか、海洋ごみをオブジェとして並べるなど、ブランドの世界観の浸透も狙う。
ペットボトルや漁網でできたオブジェの内装がシンボリック
道路に面した窓ガラスからは、ペットボトルや漁網でできたオブジェがのぞく――。有名ブランドが並ぶ玉川高島屋ショッピングセンター(東京・世田谷)の1階に構えた店舗。周辺の雰囲気とはやや場違いにも映るこうしたオブジェは、道行く人々の目にも付きやすい。エコアルフの環境配慮への思いを伝えるのが狙いだ。
エコアルフはペットボトルなど海洋ごみのリサイクル素材や、再生コットンなどを使用した服飾雑貨を手掛ける。
国内では現在2店舗を展開しており、3月に東京・渋谷に開業した国内1号店は旗艦店の位置づけだ。一方、ファミリー層に人気の高い街である二子玉川では、地域の特性にあった店作りを進める。
「ブランドについて全く知らない人が来店してくれている」(三陽商会)。渋谷の旗艦店は、もともとブランドを知っていたり興味を持っていたりする顧客がターゲットなのに対し、二子玉川はブランドを知ってもらうことを主眼に置く。オブジェに興味を持ち来店する客も多く、10代から高齢者まで幅広い年代が訪れているという。
二子玉川の売り場面積は渋谷の約半分となる約130平方メートル。渋谷には無いキッズスペースも特徴で、子供服を陳列するほか、子供が座って読書ができるコーナーもある。ゆっくり買い物できるようにとの親への配慮のほか、今後は子供が環境問題を学べるイベントのスペースとしても活用する計画だ。
接客では環境配慮の考えや、商品の特徴、製造工程なども顧客に積極的に伝えている。また、店内の壁面には「第2の地球はないのだから」との意味を込めた英語のメッセージが目立つ。このメッセージをプリントしたオーガニックコットンのTシャツも売り場の目立つ場所に陳列。価格は5940円と6600円が中心だ。
このTシャツを着用して撮った写真をSNS(交流サイト)に載せることも顧客に勧めている。試着室のカーテンの内側にも同じ文字を大きく載せ、フォトスポットとして提案している。ブランドの認知度向上だけでなく、環境意識を広げることも狙いにしているという。
サステナビリティーで成長戦略を描く
三陽商会の21年2月期の連結最終損益は35億円の赤字見通しで、不採算店舗の撤退も進めるなど取り巻く環境は厳しい。
ただ、成長戦略の1つにサステナビリティー(持続可能性)を掲げている。環境配慮を前面に押し出すエコアルフが軌道に乗るかどうかは、今後の三陽商会の事業運営にも影響を与えそうだ。
(サンローラ茉莉亜)
[日経MJ 2020年10月21日付]
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