「ゆでがえる」危うさ自覚 社員の意識、コロナが変革西武HD 後藤高志社長

不祥事に伴う2004年の上場廃止から立ち直った西武ホールディングスが再び危機にある。鉄道やプリンスホテルなど多くの事業を新型コロナウイルスが直撃する。15年前に銀行から西武に移り何度も修羅場を乗り越えた後藤高志社長。「危機に鈍感な『ゆでがえる』状態になりやすいリスクに社員が気づいた」として企業体質の強化を急ぐ。

ホテルや鉄道 無駄排除徹底

――西武グループはこれまでも多くの苦難を克服してきました。新型コロナの衝撃はどれほどでしょうか。

「コロナ禍で需要が瞬間蒸発しました。特にプリンスホテルでは緊急事態宣言中は稼働率が数パーセントまで落ち込みました。創業から約100年の歴史で、おそらく初めて直面する事態でした。鉄道とホテルは固定費が多く損益分岐点比率が高い。厳しい状況にあります」

「コロナの発生後にいち早く、社内にメッセージを発してきました。まずは固定費を圧縮する努力をお願いしました。働き方改革も進んでいましたが、事業会社も含めて時間外勤務を限りなくゼロに近づけて、在宅勤務や時差出勤を推奨し、無理と無駄を徹底的に排除してもらいました」

「私が西武に来て15年、鉄道業は『井の中のかわずのゆでがえる』になりやすいと言い続けました。不祥事を起こせばメーカーや金融はあっという間に消費者が離れる。一方、鉄道会社は通勤や通学が簡単には減らない。リスクへ鈍感になりやすく、西武鉄道が上場廃止になった際も役員の危機感は希薄でした」

――後藤社長は1990年代に第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)の中堅幹部だった際、総会屋への利益供与という会社の不祥事に直面しました。「4人組」の一員として組織改革を担いました。

「当時は銀行が信頼を失い、あっという間に膨大な預金が流出しました。その恐怖は忘れません。西武鉄道ではコロナショックで定期外の輸送人員が一時は6割以上減りました。仮に列車事故が起きても、これほどの数字にはならないでしょう。会社が『ゆでがえる』状態になってはいけないと社員もコロナを機に認識したと思います」

「現場や本社勤務の社員が一体になり、コロナショックを乗り切る議論を徹底的に続けています。様々なアイデアが出てきており、節電運行の実証実験もしました。加速や減速を繰り返すと動力効率が悪い。操作を減らすことで、コストを大きく削減できると分かりました。『ウィズコロナの中でもイノベーションに挑戦してほしい』と社内に呼びかけ、良い案がプリンスホテルなど多くの事業会社から生まれてきています」

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