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みちのく食材で食文化伝えるイタリアン 東京・恵比寿

日経MJ

細部にまで心を砕いたデザイン。グラスワインも揃っており、ワインバーとしても使える
細部にまで心を砕いたデザイン。グラスワインも揃っており、ワインバーとしても使える

地震、水害と苦難が続いた東北地方。それでも現地では生産者が努力を続け、おいしい食材を作り続けている。

東京にいながら、そうした東北の貴重な食材を適価で食べられるのが「東北×italian アルマ」だ。場所はJR恵比寿駅(東京・渋谷)から徒歩6分。クラシック(同)が運営する。同社は、カフェアンドバーの「タミルズ 品川店」や、中目黒のスパイスビストロ「TAVERN Corner」なども手がけている。

いまどき地域の食材に特化したレストランは珍しくないが、筆者がひかれたのは訳がある。それは、この店の料理が産地の食材の消費拡大だけでなく、その土地の食文化も伝える工夫が感じられたからだ。

あるときのコースのメーンは、忘れられない。宮城県産で、しっかりとしたうま味がある銘柄豚「JAPAN X」を桜の葉で包み塩釜焼きにして見事な桜色に仕上げる。その横には東北から取り寄せた野菜がグリルで添えられ、味の決め手はソース代わりの「ばっけ味噌」だ。

取材時のコース6600円のメーンはJAPAN Xの塩釜焼きばっけ味噌添え。味覚の春だ

「ばっけ」とはふきのとうの事で、山形県など東北地方ではこれを味噌であわせ、「ふきみそ」にして春の息吹を楽しむ。このひと皿に北国の春が集っていた。

これらの料理には、宮城県気仙沼市出身の佐藤正光料理長の思いが詰まっている。「ばっけ味噌のレシピは母親の味がベース」と話す佐藤料理長。なるほど、どことなくほっとする味になっている。

このほかにも次々と東北の各地の食材が説明付きで登場し、ちょっとした食材旅行が楽しめた。

ほとんどの食材は佐藤料理長が産地に足を運んだり、生産者と話して仕入れたりしたものばかり。カウンターに座れば料理の合間に産地の情報も聞けて楽しい。

料理のスタイルはイタリアンだが、キッチンには立派な炭火焼きのグリル台があり、根菜類などはここでじっくりとあぶって供される。そんな厳選した食材の持ち味をいかした料理にも出会うことが出来る。

アラカルト、コースとも充実しており、コースとワインなど楽しんで、客単価は1万円程度。恵比寿でのディナーと考えれば値ごろだ。4人からなら2時間飲み放題付きで5500円というカジュアルなプランもある。席数はカウンター10席を含む32席で、半個室もある。接待にも使えるなど、使い勝手は良いこともあり予約で埋まることが多い。月商は約700万円と好調だ。

佐藤料理長は「産地と消費地をつなぎたい」と、最近では、東北から生産者やワイナリーの代表を店に招いて、特別なディナー会も定期的に開いている。

そうした佐藤料理長の努力が、「3.11」が過ぎても東北に気持ちを向けさせる。折に触れ立ち寄りたくなる店だ。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“美味しい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2020年3月27日付]

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