甘みとうま味に陶酔 極上の冬の味覚、福井の越前ガニ

水温5度の水槽で1~2日かけて泥を吐かせてから提供する(越前蟹の坊)
水温5度の水槽で1~2日かけて泥を吐かせてから提供する(越前蟹の坊)

冬の味覚、ズワイガニ。中でも高級品として知られるのが「越前がに」だ。雄のズワイガニのうち福井県内の漁港(三国、越前、敦賀、小浜)で水揚げされたものだけが、こう名乗れる。高級なカニといえば「タグ」が付いているが、タグ(黄色)の発祥も越前がに。2018年には農林水産省の「地理的表示保護制度(GI)」にカニとして初めて登録されている。

黄色いタグにGIマークが付いた越前漁港で水揚げされた越前がに(蟹かに亭)

越前漁港近くの蟹かに亭(越前町)は水槽の中のカニを自分で選んで料理してもらうスタイルで、価格は1匹約2万~3万円台。これを2人で食べるケースが多い。刺し身や焼きガニもあるが、お薦めはゆでガニだ。同店の大西記代美さんは「発送する商品に比べ、ゆで時間が短く、半生のような状態で本来のうまみを楽しめる」と話す。

カニの初セリで活気づく越前漁港(2019年11月)

身にカニ味噌を付けて食べると、うまみと甘みに加え、カニ特有の風味が一段と引き立ち、格別だ。最後にカニ味噌を大根おろしとあえた「かにみそ丼」が楽しめる。「これが食べたいといって遠方から来るお客さんも多い」

三国漁港のすぐそばにあるのが越前蟹の坊(坂井市)。地元の有名料理旅館、望洋楼の直営店だけあって「一品一品にこだわりを持っている」(薮京介店長)。例えばカニ刺しは、ねっとりとした甘みが味わえるように水にさらす時間を一般的なカニ刺しよりも短くしている。カニ酢も特定の業者の利尻昆布でだしを取って仕立てているという。

越前がには、中でもより高級なものを選定したブランド「極」を導入した15年度前後から高値が続いている。福井県水産課によると1キログラム当たりの単価(浜値=漁業者に渡される金額)は13年度までは5千円台、14年度は6千円台だったが、15年度以降は7千~8千円台。19年11月~12月末は8566円だ。ブランド化は成功したが、料理店にとっては「あまり高いとお客さんが手を出せなくなる」と痛しかゆしの面もある。

そんな中、和食ダイニング柳庵(福井市)は「少し手を伸ばせば越前がにが食べられる」(柳町剛弘専務)ように1万2000円(税別)からの「お手軽コース」を設けている。カニの重さは300~400グラムと小ぶりだが「1人で1匹食べられるとあって、とても満足してもらっている」(同)という。

カニのシーズンは福井県が最も活気づく時期でもある。たまのぜいたくを楽しんでみてはいかがだろうか。

<マメ知識>最高級「極」 ごくわずか
福井県は2015年度から越前がにの中でも一定以上の大きさがあり、傷がないなど厳しい基準をクリアしたものを最高級ブランド「極(きわみ)」と認定している。ゆでる前の重さが1.5キログラム以上、甲羅の幅が14.5センチメートル以上、爪の幅が3センチメートル以上の大きさがあり、しかも姿形や甲羅の硬さなどもチェックする。19年11~12月の水揚げは前年同期より9匹少ない44匹で、全体のわずか0.03%しかないが、1匹あたりの平均単価(浜値)は約12万5000円、最高値は21万5000円に達した。

(福井支局長 小口道徳)

[日本経済新聞夕刊2020年2月13日付]

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