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新版「この世界の片隅に」 片渕監督が語るアニメの力

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NIKKEI STYLE

映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が20日公開される。2016年版で省いたエピソードを加え、考証を重ねてリアルな細部をさらにリアルに描き直した。片渕須直監督に聞いた。

19年版では、こうの史代の原作にあった呉の遊郭の女、白木リンを巡るエピソードが加わる。主人公すずの悩みはより深まる。

「『この世界の片隅に』(16年)は約2時間の映画にまとめるために、リンの話を省いた。すずを戦争の時代の代表者として描き、その生活を観客が一緒に体験するような映画にしたかった。でも今度は、すずを一人の人間として見せてみようと思った。彼女の心の中に何があったのだろう? というのが19年版だ」

リン、すず、夫・周作の三角関係が暗示されるが、それだけではないという。

「リンはすずに絵を描いてくれと頼む。嫁入り先の呉で同世代の知り合いは、リンしかいない。存在を認めてくれた唯一の親友だ」

当時の方言を再現

遊女たちは広島出身のすず同様、みなよそ者。そんな社会背景も垣間見える。

「様々な人が集まって、呉という街を作った。明治20年代まで小さな村々だったところに、人口40万の巨大な街ができた。ほとんど流入者だ。すずは自分を浮草のように思っているが、実は周りも浮草だった。そういう人たちと出会うことで、すずは自分を見つめ、最終的に呉に碇(いかり)を下ろすところに至るのではないか」

リンの同僚テルは九州出身。その考証も精緻だ。

「~たい、と言いながら、~ちゃ、とも言う。福岡とは違っていて、筑豊の炭鉱の辺りだなと解析していった。田川が近いが、飯塚の方が少しまろやか。戦前の言葉を覚えている飯塚のおばあさんにしゃべってもらい、声優に聞かせた」

綿密な調査に基づくリアルな細部が片渕作品の特徴だ。16年版の後に判明した事実も19年版に反映した。すずが歩く戦前の広島の中島本町の町並みがそうだ。

「爆心地に近い、今は平和記念公園になった失われた町だ。現存する大正屋呉服店の建物を描いたが、向かいに大津屋というモスリン(織物)店があった。16年版は鮮明な写真がなく、当時を知る人たちに話を聞きながら苦労して描いた。ところが、その後に出会った大津屋のお孫さんが当時の包み紙を持っており、そこにロゴが入っていた。平和記念資料館でも解像度の高い写真が見つかった。2つを組み合わせ、看板と建物を描き直した。日本家屋風でなく、アールデコが入ったモダンな造りだった」

なぜそこまでこだわる?

「当時の中島本町を知る方々も80代後半。そのお子さんたちは映画を見て、親が遊んだ町を知る。だとしたらちゃんと描きたい」

「自分がその世界に行ってみたいから」とも言う。

「『マイマイ新子の千年の魔法』(09年)は昭和30年代が舞台で、昭和35年生まれの自分はその世界がわかる。でも10年遡るとわからない。そこをのぞきに行きたかった。父母が住んだ世界を知らないままでは、大人になれない気がした」

「16年版を見た母は、それまで話さなかった戦争中の日常をしゃべり始めた。みな空襲のことは話しても毎日やっていたことを話す意味はないと思っている」

「次回作では千年くらい昔を描きたい。何月何日がどんな天気で、どんな花が咲いていたか。そうすれば自分もその時代に立てる」

いい大人のために

実写と違い、白い紙に描くアニメだからこそ、正確に現実を描きたいという。

「空想の世界に行ける楽しさこそアニメだというが、それは子供のためのアニメではないか。子供は無制限に遊んでいい。アニメの中で何になってもいい。でもいい大人になれば、将来何になりたいわけでもない。いい大人のためのアニメを僕らは作ってみた」

「世界を見ると、アニメーションドキュメンタリー的なものが数多く作られている。公開中の台湾映画『幸福路のチー』もそう。アニメはそういう選択肢を確実にもっている。想像力の世界も大事だが、もう一つのアニメがあっていい」

リアルに現実を描いても、実写にない、アニメならではの力が出るという。

「絵にする行為は大事だ。実写でご飯を炊くより、アニメで炊く方が一手間かかっていて、見過ごさず注目してもらえる。高畑勲はそれを異化効果と呼んだ。人の思考を通り抜けたことで見えてくるものがある」

(編集委員 古賀重樹)

[日本経済新聞夕刊2019年12月16日付]

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