ヘリーハンセン原宿の店舗(東京都渋谷区)
アウトドアブランドのヘリーハンセンが好調だ。マリンウエアを中心としたブランドで、1983年から国内展開するゴールドウインが昨年、商標権を取得したことで、商品展開の自由度が上がった。ファッションブランドとのコラボ商品の展開などで、手薄だった若い世代の開拓もより進みそうだ。
■港町生まれのDNAを商品作りに
同ブランドはノルウェーの港町で誕生した。船乗り向けの防水衣類などを展開、現在はマリンウエアだけでなく、山などでの使用も見越した商品なども展開する。
商標権を取得したゴールドウインはオリジナルのコラボ商品の展開に力を入れる。同ブランドは海を題材とした映画のヒットやヨットブームが影響し、40代以上に高い認知度を誇る。コラボ商品で意識するのは、若い世代の取り込みだ。
2017年7月に発売したのは耐海水性のスマートフォン(スマホ)。300台の数量限定の商品だったが、予約開始後約1分で瞬く間に売り切れた。アウトドア用スマホを製造する京セラと組んだ。異業種との意外なコラボが話題を呼んだ。
17年11月には女性向けファッションブランドの「ツモリチサト」とコラボし、コートやジャケットを発表した。保温性の高いファイバーパイルを使いながら、ツモリチサトが得意とする、かわいらしさを前面に出すデザインを採用した。アウトドアに興味の無い世代との接点も増やした。
「こんなにカジュアルなブランドなんだ」。東京・渋谷の店舗を訪れた20代女性は、60代の父親へのプレゼントを選びに来店し、街着風の品ぞろえも充実していることに驚きを隠さない。
同社でヘリーハンセン事業を統括する鈴木昭彦執行役員は「マリンスタイルはファッションとしても人気。ブランドを知らない若い世代も取り込みたい」と意気込む。
ツモリチサトとコラボした商品■ゴアテックスを使った街着を開発
18年秋冬では従来は使えなかった素材へのチャレンジも広げる。目玉は防水透湿素材のゴアテックスを使った商品。「GORE―TEX TACTICIAN COLLECTION」はゴアテックスの防水透湿性と軽量で伸び縮みする機能を生かしつつ、街中で着ることもできるすっきりとしたデザインとした。
スポーツ用品を街着としてまとう「アスレジャー」ブームの風をうけ、足元の業績は好調だ。17年春夏シーズンの売れ行きは前年同期に比べ2ケタの伸びを示した。18年春夏シーズンも同2ケタ成長の見通しだ。
20年の東京五輪では、神奈川の江の島がセーリング会場となる。ヨットが注目されるチャンスととらえ、マリンレジャー施設とのコラボ企画も始めた。品ぞろえやマーケティングの幅を広げ、新たな消費者をつかむ波を起こしたい考えだ。
(友部温)
ヘリーハンセン ▼1877年にノルウェーの港町モスで商船艦長を務めていたヘリー・ジュエル・ハンセンが防水着メーカーとして創業。マリンスポーツで着用するウエアに加え、山での利用を想定した商品も展開する。2016年から神奈川県の一色海岸で海の家「THE SAIL HUS」にヨットの帆を使った内装材の供給などで協力する。
[日経MJ 2018年8月3日付を再構成]
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