乗り物酔い防ぐには 空腹・満腹避けて遠くを見よう
ゴールデンウイークに旅行を計画する人は多いだろう。でも移動で乗り物酔いになってしまったら台無しだ。長距離移動するバスや車、船での対策を知っておこう。
乗り物酔いはなぜ起きるのか。20年に渡り乗り物酔いを研究する、のだ耳鼻咽喉科(長崎県大村市)の野田哲哉院長は「自分の調節能力を超えた揺れを受け、平衡機能障害を起こしてしまうから」と説明する。めまいや生ツバ、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)を伴う人もいる。
バスの座席は車輪ない中央部
酔い止めの薬を使わない予防策はある。バスツアーに参加するなら、「タイヤの前輪と後輪の間にあるバス中央部は比較的揺れにくい」(クラブツーリズム)。座席が選べるなら中央部を確保する。また、空腹と満腹いずれも要注意。空腹だと血糖値が下がり、満腹だと胃の揺れが大きくなり、酔いやすくなるという。
バスが走り始めたら、遠くの景色を見ると効果的だ。乗車中は無自覚でも小刻みに目が揺れる。人間の眼球を動かす力には限界があり、刺激が強すぎると平衡機能障害が重くなる。目の前の固定した座席の背なども、不規則に揺れる物体を見るのと同じ。手元でスマートフォンを操作したり、読書をしたりすると酔いやすくなるので注意が必要だ。野田さんは「気持ちが悪くなったら目をつぶって頭を動かさない」とアドバイスする。
車での旅行を計画する人も多いだろう。運転するなら、同乗者が車酔いしない運転法を知っておこう。
モータージャーナリストの菰田潔さんによると、車酔いの大きな原因になるのは、運転手が小刻みにアクセルやブレーキペダルの操作を繰り返すこと。「車体を揺らす下手な運転」(菰田さん)で頭が揺れ、酔いやすくなってしまうという。
「無理な追い越しをせず、左車線を一定のスピードで走って車体を揺らさないことが重要」と菰田さん。目標とするスピードを意識すると快適な走りができる。路面の勾配や風の変化などを考え、繊細なアクセルコントロールを覚えることで車体を揺らさない「スムーズ・ドライビング」が身につく。同乗者は後部座席でもしっかりとシートベルトを締め、車の揺れを感じないようにすることも予防につながる。
閉鎖された狭い車内では空気の入れ換えも大事だ。たばこやペット、食べ物の残り香に加え、エアコンから出るほこりっぽい空気も酔いの原因になる。エアコンの内外気切り替えスイッチを外気導入にして、新鮮な空気を入れよう。送風口に消臭剤を取り付けるのも手だ。
揺れ大きい船 波に身を委ねて
乗り物のなかでも揺れの大きい船酔い対策もおさえたい。クルーズの旅は逃げ場もない。船上では、波に逆らわないのが一番。ダイビング誌「マリンダイビング」の副編集長、後藤ゆかりさんは「体をこわばらせると、平衡感覚をつかさどる内耳の三半規管へのダメージが大きくなる」と強調する。
事前に船の揺れを想定した訓練をして体を慣らす方法もある。「目を閉じて下をむいた状態で、公園のブランコをこぐのが有効」(後藤さん)という。船酔いは最初はひどくても、経験を積むうちに体が慣れることもある。取材やダイビングで多くのクルーズを経験した後藤さんは「最初は3分で吐き気に襲われたけれど、だいぶ強くなった」と話す。
船内でも上層のデッキほど揺れやすいので注意したい。エンジンを搭載した船体後部の方が揺れにくい。気持ちが悪くなったら風通しのいい後部に移動しよう。ウエットスーツや締め付けの強い服は脱いで、日陰で横になって一休みしよう。
後藤さんは経験上、「オレンジなどかんきつ系の果物を食べると酔いがひどくなることがある」と話す。これは多くのダイバーが経験しているとのこと。また、手首のツボを刺激し、気持ち悪さを和らげてくれる「シーバンド」というアイテムを使うダイバーもいる。
写真を撮ろうとカメラをセッティングする細かい作業も酔いの大敵。船出する前に済ませておこう。
効果には個人差があるが、楽しい思い出になるように、小道具も活用し乗り物酔いを軽減しよう。
(宇都宮想)
[NIKKEIプラス1 2018年4月21日付]
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