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フェス2冠 北本トマトカレー、農家らがレシピ考案

2018/2/1付 日本経済新聞 夕刊

水織うどんでは定番的なトマトカレーを味わえる

 埼玉県のほぼ中央部、北本市からご当地カレーの新たな風が吹く。ライスまで赤みを帯び、さわやかな酸味が味わえる北本トマトカレー。誕生から7年、全国的なカレーフェスティバルで2冠に輝いた。戦前の一時期、トマト栽培と加工産品で名を知られた郷土の誇りが、トマトづくしのレシピに込められている。

 ルー、トッピングにトマトを使用し、ライスもトマトで赤くすること――。カフェ、うどん・そば、ラーメンなど市内11の飲食店が、この条件の中で個性を競う。北本市観光協会がグルメマップをつくり各店を紹介している。

ヘブンはインド料理がベースだ

 JR高崎線北本駅近くのインド料理&アジアン居酒屋、ヘブンはインディカ米ライスとトマトを練り込んだナンが特徴。ルーはスパイシーだが、ミルク風味のやさしさも感じる。ネパール出身の経営者のドゥンガナ・クリスナさん(32)は「休みには遠くから食べにくる人もいます」。

 イタリア料理店、cucinA D(クッチーナ ディー)では、イタリアンらしくトマトソースとチーズをあえたリゾットライスの充実感が満点だ。定番的な味なら水織(みおり)うどん。さわやかな酸味が新鮮。ライスはトマトと一緒に炊きこんでいるが違和感はなく、プチトマトを豚肉で巻いたカツがのる。

トマトのハウス栽培をする加藤さん。出荷のシーズンは1月から7月まで

 トマトとのつながりは栽培を始めた大正期から。昭和初期に加工工場ができた。郷土史に詳しい白石春彦さん(76)は「農民の7割が資金・労務提供の形で出資した、村を挙げての大事業だった」と話す。加工した商品は国産初の無着色ピューレとされた。戦時になり工場は姿を消す。

 トマト黄金期よ再び――。2011年、B級グルメ大会の地元開催を機に、北本市が特産のトマトを生かしたレシピを公募した。農家の加藤浩さん(49)らがトマトづくしのカレーレシピを考案した。味の改良を重ね、14年以降「全国ご当地カレーグランプリ」など、全国規模のグルメイベントで相次ぎ優勝した。

手軽に味わえるレトルト(右)やスパイスメーカーが製造するルー(左)もおすすめ

 人気は地域を越えつつある。北本市観光協会が販売する、優勝したレシピを再現した公式レトルトは17年秋までの3年間で10万食を販売。カフェ、一凛珈琲は北本店での手応えを踏まえ東京都三鷹市の店舗でもメニューに載せている。

 若い世代の流出が北本市の懸案だ。「消滅可能性都市」に入った埼玉県の6市の一つでもある。加藤さんは「街の魅力を届けたい。ささやかですがカレーがスパイス役になれば」と話す。

<マメ知識>栽培、当初は種子輸出用
 旧石戸村(現北本市)がトマト栽培を始めた1925年当初は生食用ではなく種子の米国輸出が目的だった。27年、果肉も利用するため食品加工工場を建設。加工品、トマトともに有名になった。現在は「本格的に栽培する農家は8軒」(農業関係者)と産地として小規模で、大半が地元向けだ。
 カレー効果は農業にも波及している。地元建設会社が農業生産法人を設立し、2016年からトマトの出荷を開始。「カレー向けに供給が途切れることなく通年で栽培する」(高松隆士北本アグリ社長)という。

(さいたま支局長 深沢潔)

[日本経済新聞夕刊2018年2月1日付]

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