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追加料金不要 一宮、モーニング発祥地の贅沢サービス

2018/1/11付 日本経済新聞 夕刊

喫茶ナポリのモーニングは、トーストを小倉あんとともに楽しめる

 愛知県一宮市は繊維産業の町として知られる。戦後、繊維業者らの商談の場にもなった喫茶店で出されるようになったのが、コーヒーにトーストなどの食べ物が無料でつくモーニングサービス。発祥の地の一つといわれ、近隣の名古屋市で広まった。

創業から50年超が過ぎた喫茶ナポリは松本靖さん(左)ら家族で切り盛りする(愛知県一宮市)

 一宮市役所から徒歩5分ほどの喫茶店ナポリ。市内でも創業50年超の最古参の喫茶店の一つだ。昼食前の時間でも近所の住民や一休みするサラリーマン、夜勤明けの人らでほぼ満席だ。同店のモーニングは、トーストに小倉あんをのせた「小倉トースト」だ。

 あんに合うようにと、バターではなく、植物性のマーガリンを使った。香ばしく焼けたトーストと小倉あんの甘みが絶妙に絡み合う。味を調整できるよう、トーストの全面にあんを塗るのではなく、端に寄せた。市内の養鶏業者から仕入れるゆで卵も素朴ながらコクのある味わいだ。

 トーストとゆで卵はコーヒーなどの飲み物についており追加料金は不要だ。市内の喫茶店がゆで卵とピーナツをおまけとして提供したのがモーニングの始まりとの説がある。ナポリの2代目店長、松本靖さん(55)は「物心ついた時からこの店や周辺にモーニングがあった」と話す。

 同市は経済界が中心となり、モーニングの発祥の地として普及啓発を進める「一宮モーニング協議会」を立ち上げた。「一宮モーニング」は地域団体商標になった。100店の紹介マップをつくり、PRイベントも開く。

 一日中楽しめる店も多い。市内の名鉄奥町駅から徒歩約10分のありすかふぇは午前7時~午後6時に「1日中モーニング」を提供する。トーストだけでなく、おにぎりやきしめんなど計26種類のメニューがある。店長の坂本龍基さん(32)は「1日に2回、3回と来る客も多い」と話す。

ありすかふぇはモーニングサービスで、きしめんと味噌汁を付けている(一宮市)

 発祥が一宮市なら、文化として広めたのが近隣の名古屋市だろう。名古屋駅前の一角にあるモーニング喫茶リヨンは、週末の朝には行列ができる。「モーニングを目当てに訪れる出張や旅行の客が多い」(川合正樹店長、32)

 トーストに焼き目を付けた「プレスサンド」はしゃきしゃきとした野菜の食感に、マヨネーズの酸味がほど良く効いている。食べやすく薄くカットしてあるのもうれしい点だ。一見素朴だが、どこまでもこまやかな心遣いが光る。同店もモーニングを一日中提供する。愛知の人の、おもてなしの神髄を見た気がした。

<マメ知識>食パン なぜ食パン?
 モーニングの定番、トーストはこんがり焼かれた食パンだ。なぜ食パンと呼ぶのだろうか。原型は明治初期に英国から日本に伝わった山型の白パンという。「主食のパンだから、食パン」「美術のデッサンを消すための『消しパン』があったから」など、複数の説があるがはっきりしない。
 戦後、進駐軍の兵士向けに食パンが販売され、日本人向けに味が調整されて普及した。小麦粉やイースト、水、塩を原料とする欧州のパンに比べ、食パンは牛乳、バターなどが添加される場合が多い。

(名古屋支社 小野沢健一)

[日本経済新聞夕刊2018年1月11日付]

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