フード・レストラン

おでかけナビ

養殖発祥 浜松のうなぎ、関東の蒸しと関西の焼き混在

2017/12/5付 日本経済新聞 夕刊

あつみ(浜松市中区)はふっくら関東風

うなぎ養殖の発祥の地である浜名湖を抱える浜松市には約80軒ものうなぎ料理の専門店がある。産地として100年以上の歴史を持つうえ、消費額が全国1位であるなど、うなぎの食文化が根付いている。柔らかさ重視の関東風と、香ばしさと歯応えの関西流両方が食べられることも特徴だ。

JR浜松駅から徒歩10分弱の繁華街にあるあつみは1907年(明治40年)創業の老舗だ。土日は原則的に電話予約を断っており、午前10時から配られる予約票を求める行列ができることも。「暑さや寒さのなかで延々と待ってもらうことは避けたい」と5代目の渥美悟社長(45)。「うなぎは個体差が大きいので一匹ごとに味を引き出す技術が必要」と語り、ふっくらした関東風のうな重が人気だ。肉厚でうまみが広がる。

浜名湖地域でうなぎの養殖が始まったのは1900年ごろだ。温暖な気候にくわえ、稚魚のシラスウナギがとれ、国内を代表する産地に育った。浜松市内には中川屋やうなぎ藤田など明治時代に創業した老舗のうなぎ料理専門店がある。

八百徳も1909年創業だ。関東風のうな重にくわえて、だし茶漬けでも食べられる「お櫃(ひつ)うなぎ茶漬け」を30年ほど前から提供している。名古屋の「ひつまぶし」に似ているが、ひつまぶしのうなぎが関西風の焼きなのに対して、柔らかい関東風だ。

市内約30店の専門店が加盟する「浜松うなぎ料理専門店振興会」の会長でもある八百徳の高橋徳一社長(68)は「浜松は東京と大阪のほぼ中間地点で、うなぎも関東流と関西風が混在している」と解説する。切腹を嫌う武家文化を反映して背開きで、竹串で刺して素焼きし、セイロで蒸して、再び焼くのが関東風。八百徳では「蒸しはやや浅めで提供している」という。

関西風は腹を割って話す商人文化から腹開きで、金串で刺し、蒸さずに焼き上げる。かんたろうの蜂須賀強社長(62)は「関西風ではうなぎそのものの柔らかさが重要」と語る。注文を受けてから、一匹当たり10秒ほどでさばき、火力を強くした炭火で10分ほどで焼き上げる。香ばしく、ぱりっとした食感が楽しめる。

串打ち三年、割き八年、焼きは一生――。うなぎのかば焼きの技術は奥深く、店や職人ごとにこだわりもある。浜松市民は購入額が世帯当たりで都市別では断然トップだ。かんたろうの蜂須賀社長は「うなぎ好きのお客さんに職人が育てられる」と語る。

データはやや古いが、浜松商工会議所が2009年にまとめた調査によると浜松市内のうなぎ料理専門店は82店で、このほかに養鰻(ようまん)場や卸業者がタレを絡める前の「白焼き」で供する持ち帰り専門店が36店ある。NTTタウンページ(東京・港)の11年の調べによると静岡県内の「うなぎ料理」の登録件数は人口10万人当たり6.06件と5.20件の東京都などを抑えて1位だった。

一方で産地としてはトップの座を譲って久しい。静岡県のうなぎ養殖生産量のピークは1968年で、県別の生産量では83年に愛知県、98年に鹿児島県が1位になった。2016年農林水産省漁業・養殖業生産統計(概算値)によると、国内養殖うなぎの生産量は1万8941トンで、首位の鹿児島県が7990トンに対して静岡県は1654トンだ。

浜名湖はうなぎ養殖発祥の地だ(浜松市西区の浜名湖養魚漁業協同組合)

浜松市と浜名湖対岸の湖西市の約30の養鰻場が加盟する浜名湖養魚漁業協同組合の外山昭広組合長(70)は「生き残りには地産地消の比率を上げて浜名湖のうなぎをブランド化しないといけない」と語る。ニホンウナギがワシントン条約の対象になる可能性が出てくるなど、生産量は大きくは増やしにくいからだ。

養鰻場が出荷したウナギすべてが浜松で消費されるわけではない。専門店側は季節によって国内の他の産地のうなぎも使っている。生産者と料理店で切磋琢磨(せっさたくま)して、地産地消の比率を上げていく取り組みも必要だ。

東京などに打って出る店もある。うなぎ藤田は昨年、東京・白金台に出店。うなぎ徳は西麻布と銀座、渋谷ヒカリエのほか、京都高島屋と大阪、博多に支店を出している。うなぎ徳の河合毅治社長(48)は「うなぎだけでなく、付け合わせのメロンなど静岡県産の食材の品質の高さをアピールしたい」と語る。

<マメ知識>かば焼き消費 全国トップ
総務省の家計調査によると浜松市の世帯当たりの「うなぎのかば焼き」購入金額は2014~16年の平均で年間6403円。都道府県庁所在地と政令指定都市のなかでのランキングで2位の大津市(3760円)を大きく引き離し、全国平均(2380円)の2.7倍だ。
うなぎ料理専門店での外食は統計対象に含まれず、スーパーの持ち帰り用かば焼きに加えて、浜名湖周辺に多い直売所が統計を押し上げている。養鰻(ようまん)場や卸業者の直売所で白焼きを買い、家庭で温めてタレを絡めるのも浜松流の食べ方だ。

(浜松支局長 剣持泰宏)

[日本経済新聞夕刊2017年12月5日付]

フード・レストラン 新着記事

ALL CHANNEL