東京JAZZ、「若者の街」に響け 丸の内から渋谷へ
日本最大級の国際ジャズ祭、東京JAZZ。16回目を迎える今年から渋谷に移転する。NHKホールや代々木公園、渋谷駅、ライブハウス、能楽堂など地域ぐるみの一大イベントになる。
◇ ◇ ◇
「2017年、東京JAZZは渋谷に移転します」。昨年9月、東京JAZZのフィナーレで、こんな予告文がスクリーンに現れてファンを驚かせた。
2002年に現在の味の素スタジアムで始まった東京JAZZは、06年から昨年まで、都心の丸の内にある東京国際フォーラムを中心に開かれてきた。「主な客層は50~60代の男性で、丸の内というビジネス街にもマッチしていた」と東京JAZZの平井流土プロデューサーは言う。
しかし、国際フォーラムが20年東京五輪のウエートリフティング会場に使われるなど、いくつかの事情から移転することになった。「近年は新しい音楽と融合し、ジャズそのものが多様化している。若者の街である渋谷が舞台なら、従来とは違う新しいタイプのジャズも発信できる。並木道や駅、能楽堂など、有料、無料の多彩な場所で、幅広い世代に楽しんでいただきたい」と平井プロデューサー。
100年の歴史紹介
メイン会場はNHKホール(9月2、3日)。注目されるのは3日昼の「JAZZ100年プロジェクト」だ。ジャズの最初のレコードが発売された1917年から100年を迎えるのを記念した企画で、米ニューヨーク在住の気鋭の作曲家、挟間美帆がディレクターに抜てきされた。
「ディキシーランド、スイング、バップ、クールなどと変遷した100年を1時間で紹介するのは大変ですが、各時代を代表する有名な曲を選び、時代背景の説明も入れながら、オリジナルの楽譜を忠実に再現したい」と挟間は意気込む。
演奏は名門のデンマークラジオ・ビッグバンド、ソリストはリー・コニッツや日野皓正、山下洋輔といったベテランがそろう。挟間は「ジャズの歴史的な瞬間を当事者として経験してきた人ばかり。各時代のムードがリアルによみがえると期待しています」と話す。
早くから「天才少女」と注目されてきた20歳のドラマー、川口千里の初出演(3日夜)も話題だ。川口は「最年少の若さを生かし、私たちがステージに上がったら急に明るくなったと言われるくらい、ハッピーな演奏にしたい」と話す。
「今回の東京JAZZはスティーブ・ガッド、ピーター・アースキン、デイヴ・ウェックルとドラムの名手が集まるから、同じドラマーとして本当に楽しみ。間近で演奏を見て勉強したい」と川口が付け加えた。
渡辺貞夫がデイヴ・グルーシンやリー・リトナーとともに1978年の大ヒット作「カリフォルニア・シャワー」の曲などを演奏(3日夜)し、ピアノのチック・コリアが2日昼と3日昼に違うプログラムで登場するなど、ホール公演は注目のプログラムが多い。
従来の枠超えて
1~3日にはライブハウスのWWWとWWWXも東京JAZZの会場になる。コーリー・ヘンリー&ザ・ファンク・アポストルズ、ジム・オルークや石橋英子らの「カフカ鼾」といった国内外のグループが、従来のジャズの枠に収まらない最先端の音楽を聴かせる。
セルリアンタワー能楽堂も2、3日は東京JAZZの会場になる。3日昼にはアル・ディ・メオラ、同日夜は渡辺香津美とギターの名手がソロで登場する。
無料で楽しめるプログラムも各地で用意されている。1、2日には渋谷駅構内で「ステーション・ジャズ!」と銘打ち、国内外のビッグバンドが競演する。
代々木公園ケヤキ並木にもピアニストの松永貴志をはじめ、数多くのミュージシャンが登場し、NHKホール横の並木道がジャズストリートに変貌する。渋谷の街を練り歩くジャズパレードも予定されている。
会期は9月1~3日。20万人の来場が見込まれている。来年以降も渋谷を会場に、街と一体化したフェスを目指すという。
(編集委員 吉田俊宏)
[日本経済新聞夕刊2017年7月24日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。