耳掃除、やり過ぎは逆効果 1~2カ月に1回スッキリ耳垢には抗菌作用/刺激多いと分泌物増

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耳の掃除。どのくらいの頻度でしているだろうか。「毎日、風呂上がりに綿棒できれいにしている」という人は要注意だ。掃除のし過ぎは、かえって耳の健康を損ねると、米国の学会で警鐘が鳴らされたばかり。耳垢(あか)との上手な付き合い方について知っておこう。

 今年1月、米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会は最新の診療ガイドラインで、過度な耳掃除をやめるように警告した。もともと耳垢には役割があり、耳掃除自体がトラブルのもとになるからだ。

 JCHO東京新宿メディカルセンター(東京・新宿)耳鼻咽喉科の石井正則部長は「以前から専門家の間では過度な耳掃除の危険性は言われていた。誤って鼓膜を傷つける例も少なくない」と言う。また耳垢を奥に押し込んでしまい「耳垢栓塞(じこうせんそく)」を起こすことも。耳垢が耳の穴を塞げば難聴の原因にもなる。「もちろん大量にたまって起きることもあるが、多くは掃除の時に押し込んだのが原因」(石井部長)

 耳垢は、耳垢腺からの分泌物やはがれ落ちた外耳道の表皮などが混ざり合ったもの。「垢」と呼ばれるが、本来必要なものだという。重要な役割の一つが抗菌作用だ。「耳垢の中には免疫グロブリンAなどが含まれ、細菌の増殖を抑えて耳の中を守っている」と石井部長。

 耳垢が無いと逆に感染を起こしやすくなる。外耳道湿疹や外耳道炎でかゆみや痛みが出ることも。帝京大学医学部付属溝口病院耳鼻咽喉科(川崎市)の白馬伸洋教授は「かゆいからと綿棒などで頻繁に触っていると傷口から細菌が入り、膿(うみ)がたまることがある。抵抗力が落ちた人では耳の中にカビが生えることもある」と注意する。

 別の役割の一つが、昆虫の侵入防止。「掃除し過ぎて耳の中がつるつるだと、ハネアリなどの虫が巣穴と間違えて入り込むことがある」と石井部長。

 耳の中で昆虫が動き回るのだから大変だ。異常な音と痛み、外耳道や鼓膜の損傷、感染などが起きる危険もある。応急処置として、オリーブオイルなど油を耳に流し込んで虫を窒息させ、耳鼻咽喉科で取り出してもらう。

 また、刺激の与え過ぎで、耳垢腺からの分泌物が増え、かえって耳垢が増えることもあるので注意が必要だ。

 では、どのくらいの頻度で耳掃除をすればいいのか。石井部長は「1、2カ月に1回程度で十分。多くてもせいぜい2週間に1回まで」という。石井部長自身は30年以上、耳掃除をしていないが何の問題もないという。「外耳道にはもともと自浄作用があり、耳垢は自然に外へ出ていく」(石井部長)からだ。

 外耳道の表皮は、鼓膜から外側に向かって爪が伸びるように少しずつ移動していく。大人の場合、外耳道は3~3.5センチほど。耳の入り口近くには毛が生えている。鼓膜から出発した表皮は1、2カ月かけて耳毛のところまで達し、ここで耳垢腺からの分泌物と一緒になって耳垢となる。そして、この耳垢は食事やあくびなどで顎を動かすたびに外側に移動し、やがて耳の外へと押し出される。これが自浄作用だ。

 ただし、高齢になるとこの自浄作用は衰える。また人によっては外耳道が狭く曲がっていて、耳垢が外に出にくいこともあるという。

 自分で掃除をする際、綿棒や耳かきを絶対に耳の奥まで入れない。「掃除をしてもいいのは、耳の入り口から1センチ程度で耳の毛が生えているところまで」と石井部長。耳垢清掃術は健康保険が利き、3割負担の人なら両耳で500円(初診料などは除く)。「特に耳垢が湿っている人は耳垢栓塞になりやすい。定期的に掃除をしてもらうといい」と白馬教授は話す。

(ライター 佐田 節子)

[NIKKEIプラス1 2017年3月18日付]

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