むだ毛処理、自己流は危険? 乾燥肌や黒ずみ、感染症も皮膚とカミソリ清潔に、日焼けに注意

肌を見せることの多いこの季節、むだ毛を気にする人は多い。最近は女性ばかりでなく、男性もすね毛や腕の毛を処理する人が増えているようだ。しかし、自己流のむだ毛処理を行っていると、皮膚炎や肌の黒ずみなど、思わぬトラブルを招くことにもなる。皮膚科医などに、適切なむだ毛処理の方法を聞いた。

体毛の処理に詳しい秋葉原スキンクリニック(東京・千代田)の堀内祐紀院長は「名刺交換などのビジネスシーンで、自分の手の甲や腕の毛が気になるといって脱毛に訪れる男性が増えている」と話す。

とはいえ、多くの人は自分で脱毛や除毛をしている。「不適切な処理方法で乾燥肌やかゆみ、感染症などのトラブルを起こすこともある」と堀内氏は注意を促す。

家庭でできる主なむだ毛処理法にはそる、抜く、除毛・脱色剤を使うなどがある(下図参照)。堀内氏は「そる以外の方法はお勧めしない」という。

抜いた毛穴に菌

毛抜き1本で手軽な「抜く」方法を行う人は少なくない。しかし「抜毛は皮膚への刺激が大きいうえに、抜き取った毛穴に細菌が入って毛のう炎という皮膚炎になる可能性がある」(堀内氏)。

毛のう炎では、毛穴が赤く腫れる。「そのまま治ることもあるが、悪化すると感染が皮膚の深部にまで広がり壊死を起こす蜂窩織炎(ほうかしきえん)になることも。腫れや痛みがあれば医療機関での抗生剤による治療が必要」と明和病院(兵庫県西宮市)皮膚科の黒川一郎部長は指摘する。

さらに、毛を抜く時には毛穴の回りの皮膚も一緒に引っ張られる。長年抜毛を続けていると、毛穴が立って、鶏の皮のようになる。ワックスで抜くのは、もっと肌へのダメージが大きい。毛だけでなく、皮膚表面の角質層も一緒に厚くはがすので、肌が乾燥しやすくなったり、紫外線への防御機能が低下したりする。

家庭でのむだ毛処理で一番安全なのは、そる方法だ。ただし、その場合にも押さえておくべきポイントがある。

まず、カミソリの場合には、刃の枚数が3、4枚のものを使うこと。「刃の数が多いほど、皮膚への圧力が分散しやすくダメージが少ない」(堀内氏)からだ。電気カミソリは振動で毛を浮かせながらそるので、肌への負担が少ないという。

次に、処理する部位を清潔にすること。肌が傷ついても細菌感染を起こしにくくするためだ。そる際には、シェービングローションや石けんの泡などで刃の滑りを良くするとともに、毛を柔らかくすることも重要だ。「しっかりとそろうとするあまり、毛の流れと逆にそる人がいるが、肌を傷つけてしまう。毛の流れに沿わせる」(堀内氏)

そった後、ヒリヒリしたり赤くなったりしたら力の入れ過ぎだ。入浴時にむだ毛処理をすることが多いが、そった後は皮膚を鎮静するため、ぬるめのシャワーか水で軽く流し、入浴は控える。

保湿剤でケア

どんなにやさしくそっても、皮膚表面の角質は削られてしまうので保湿は欠かせない。敏感肌用ローションや乳幼児用ワセリンなど、刺激の少ない保湿剤を表面に塗る。そる前の肌で自分に合うかどうか試しておこう。また、そった後は紫外線を防御する力も低下する。外出時は日焼け止めクリームなどで紫外線ケアも忘れないように。

ダメージを最小に抑えるには、そる頻度をできるだけ少なくする。「毛の量や伸びの速さにもよるが、数日はあけて」と堀内氏は注意する。

もう一つ大事なのが、カミソリの管理だ。感染を防ぐため、常に清潔に保つ。使用後は消毒用アルコールなどで拭き、浴室に放置せずに十分に乾燥させる。切れ味が悪くなったカミソリも肌にダメージを与えるので、2~4週間ごとに新しい物に替える。

顔の産毛を剃る人も多い。しかし「顔の場合、それが刺激になって黒ずむことがある。特に30代から増える女性のシミの一種、肝斑(かんぱん)の人は症状が悪化することもある。どうしてもそるなら電気シェーバーを」と堀内氏は話す。

何度も剃るのは面倒、体毛が濃く剃毛ではすぐ目立つという人は、医療機関のレーザー脱毛という手もある。これは、黒い物に吸収されるレーザー光をあて、そこで発生する熱で毛根を壊して毛が生えるのを抑える療法だ。数回の施術で脱毛できる。ただし「機器によっては毛の色が薄い人や肌の色が黒い人は期待通りの効果がない場合もある」(堀内氏)という。

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鼻毛は専用カッターで、切り過ぎ厳禁

すねやワキの毛と同様、気になるのが鼻毛。指でつまんで一気に抜く人もいるが、実はそれは大きな間違いだという。

東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学の鴻信義教授は「鼻毛はホコリなどの侵入を防ぐ機能があり細菌も多く付着している。毛を抜いて傷んだ毛穴に細菌が入って毛のう炎になることも。鼻口の中心側はもともと血も出やすい場所だ」という。

鼻毛の処理は、肌に直接刃が当たらない専用カッターでそるのがいい。「鼻口から1センチほど奥は粘膜。鼻毛には湿度や温度を調節して喉や肺を健康に保つ役割もあり、そり過ぎは厳禁。そるなら鼻口から5ミリ程度に」(鴻氏)

(ライター 武田 京子)

[日経プラスワン2016年8月27日付]