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ガマの油売り、口伝へ大汗 筑波の伝統を国内外で披露

「筑波山がまの油売り口上研究会」会長、林正一

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NIKKEI STYLE

「サァーサァーお立ち会い、御用と急ぎでない方はゆっくりと聞いておいで、見ておいで――」。茨城県、筑波山の名物として知られる「がまの油売り口上」。私は約半世紀にわたり、この口上と関わり、その伝承者として、一般の方々への普及に努めている。

口上の起こりは江戸時代中ごろにまで遡る。永井兵助という人物が筑波山でしか捕獲できない「四六のがま」と呼ばれる霊力を持ったガマガエルの脂汗を搾って加工し、浅草の付近で売りさばいたのが始まりといわれている。「何にでもよく効く陣中膏(じんちゅうこう)」というのが触れ込みだったようだ。

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中学3年で弟子入り

現在は法律により、露天商が薬品を売ることはできないが、威勢のいい語り口と刀を使った所作は変わらない。あらかじめ刀に赤い絵の具を塗っておき、腕に当て血のように見せる。これにガマの油を塗ると、血がピタリと止まるというわけだ。サヤから刀を抜く素早さが欠かせない。

主に披露するのはイベントや宴会の余興などの場だ。油売りは大道芸だ。いかにお客さんに足を止めてもらい関心を持ってもらうか。「どこで売っていますか」と言われるのが一番の褒め言葉だ。実際に売ることはもちろんない。

口上に出合ったのは中学生の頃。合宿で予定されていたキャンプファイアが雨で中止になり、代わりに第18代名人、永井兵助こと岡野寛人さんの実演が行われた。その所作がかっこよくてとりこになった。その晩は興奮して眠れず、配られた口上が書かれた用紙を暗記した。翌朝にはそらんじられるようになった。

本格的に習いたいと、中学3年のとき、岡野さんを訪ね入門させてもらった。毎週日曜日に片道20キロの道のりを自転車をとばして通った。距離が気にならないくらい、熱中していた。

▲ ■ ▼

受講生1600人

高校を卒業して、村役場に勤めるようになると、口上を使い、もっと村や県を盛り上げたいと思うようになった。関西で茨城県から来たと言うと、「東北ですか?」と言われたこともあった。茨城の広告塔を名乗り、県のイベントなどで北海道から沖縄まで口上を披露して回った。日本の文化を知ってもらうイベントにも帯同し、英語版の口上をパリやロンドンで実演したこともあった。

さらに多くの人に知ってもらいたいと1977年から始めたのが、無料の「がまの油売り口上講座」だ。口上を披露できる人もどんどん減っており、このままでは消えてしまうのではないかという危機感もあった。現在も続けており、これまでに1600人ほどの受講生が学んでいる。

講座は全4回で年に1回茨城県土浦市で開いている。中には兵庫県や仙台市から通った人もいる。そのほかに、講座で学んだ私の弟子が、茨城県内3カ所で毎月勉強会を開いている。講座では単に口上や刀の動かし方を教えるだけではなく、その始まりや筑波山の歴史についての講義も行う。文化としての口上を知ってもらうことが、語りにもいい影響を与えると思うからだ。

がま口上はもともと売ってなんぼの大道芸。伝統的な口上はあるが基本をしっかり抑えていれば、臨機応変に変えてもいいと思っている。例えば、がまが「脂汗をタラーリ・タラリ」と流す場面に窮地に陥っている政治家や芸能人の名前を入れるといった具合だ。ただし、やり過ぎは禁物。アレンジは薬味程度に効かせるのがコツだ。

▲ ■ ▼

町長から名人位を受領

演者の個性を生かせることも魅力の一つだ。私は茨城なまりが抜けないがそれもまた、味になる。声が低ければすごみを効かせ、気が弱ければ泣き落とし。十人十色の形があっていい。受講生にはそう教えている。

人に教えることは、自分でやるより何倍もエネルギーを使う。それだけに、自分の技術を高めることにもつながっている。旧筑波町長から名人位を授与されたが、自分でも満足のいく口上ができるのは10回中2回くらい。毎回、場所もお客さんも違うため、これでいいという正解はない。

模造刀とはいえ、刀を使うため、口上を披露する場が減っているのが現状だ。つてを頼り、受講生にはできる限り、イベントなどで披露する場を提供している。全国の魅力度ランキングでは茨城県の順位は低い。口上を伝承しながら、全国に地元の魅力を伝えていきたい。

(「筑波山がまの油売り口上研究会」会長=はやし・まさいち)

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