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首の痛み、手足にしびれ要注意 適度な運動を 骨が神経圧迫、頸椎症の恐れ 長時間同じ姿勢避け

2016/7/21 日本経済新聞 プラスワン

「首のこりがなかなかとれない」「洗濯物を干すために上を向いていたら首が痛くなった」――。こうした首のこりや痛みは誰でも経験する症状の一つ。だが、この痛みに手足のしびれが伴ったら要注意だ。40代以降に増えてくる首の骨である頸椎(けいつい)の病気の可能性があるという。

首の痛みや強いこりなどを訴える人は、国内に1千万人程度とされる。防衛医科大学校病院整形外科の千葉一裕教授は「9割は筋肉の疲労などからくる原因のはっきりしない痛み。1、2週間で改善することが多く心配しなくてもよい」と話す。問題は残りの1割。思わぬ病気が潜んでいることがある。

頸椎は椎骨(ついこつ)という小さな骨が7つ連なってできている。中心には脳の「指令」を全身に送る神経の太い束である脊髄が走り、それぞれの椎骨の間からは手や背中に向かう神経の枝である神経根が伸びている。生活習慣や加齢、体質などが原因で頸椎が変形し、脊髄や神経根が圧迫されるとさまざまな症状が出てくる。

代表的な病気が頸椎椎間板ヘルニア、後縦靱帯骨化症、頸椎症だ。

頸椎の間には椎間板というクッションのような軟骨があるが、この軟骨が壊れて脊髄や神経根が圧迫されることで症状が出るのが頸椎椎間板ヘルニアだ。患者は40~50代に多いという。

後縦靱帯骨化症は、頸椎同士をつなぐ靱帯の一部が厚く盛り上がって硬い骨になり、脊髄などを圧迫する。千葉教授は「発症には遺伝が関係していると考えられる。骨化は30代ぐらいから少しずつ進み、症状は50歳を過ぎたころから出ることが多い」と話す。

■60代以上で増加

最も多いのが頸椎症。首の骨が加齢で変形、変形した骨や分厚くなった靱帯が神経を圧迫する。誰にでも起こるが、60代以降になると症状を訴える人が増えるという。

これらの病気の主な症状は、神経根の圧迫によるものと、脊髄の圧迫によるものに分けられる。

神経根が圧迫されると「首や肩甲骨周辺の強い痛み」「肩から腕にかけての強い痛みやしびれ」「腕や手指の筋力低下で力が入りにくい」などの症状が出ることが多い。体の片側に起こりやすいのも特徴だ。

一方、脊髄の圧迫では、痛みを感じにくいが、両手足にしびれなどの感覚障害が起こるほか「ボタンの留め外しがしにくい」「食事中、箸で上手につかめない」といった手指の運動障害が見られる。ひどくなると頻尿や便秘などの排せつ障害が出ることもある。

頸椎の骨の変形は少しずつ進む。症状に早く気づき対処することが大切だ。首の痛みが2週間以上しても治らないとか、手足のしびれなどがある場合は整形外科へいく。

また、神経が圧迫されているかどうか簡単に確認する方法がある。慶応大学病院整形外科・脊髄班チーフの石井賢専任講師は「腕を伸ばして手を握る(グー)、開く(パー)をなるべく早く繰り返す。10秒間に10回できない場合は、圧迫されている可能性がある」と話す。チェックは左右で。20回以上できれば圧迫は無いと考えられる。

■軽症は保存療法

これらの病気は、重症の場合は手術治療もあるが、軽症なら保存療法をとる。首に負担が少ない姿勢や軽い運動による生活改善、痛みや炎症を抑える薬を使う、首を温めて血行を良くするなど。

原因の分からない首の不調にも欠かせないのが生活改善だ。石井専任講師は「首を上にすると骨の間が狭くなって神経の圧迫が強くなることがある」と話す。洗濯物を干すのも低い位置にし、頭を長時間上に向けるような動作を避ける。肩掛けカバンも片方だけにかけず、リュックやキャリーバッグを上手に使おう。

同じ姿勢も首に負担がかかるので、ゲームやスマートフォン利用時は要注意。パソコン画面の高さは楽な位置で作業できるよう調整し、一定時間作業したら休憩する。

適度な運動も大事。千葉教授は「痛いからといってじっと動かさないでいるより、無理のない範囲で体を動かしていた方が動きが回復しやすい」という。作業の合間には首を前後左右に動かし、肩甲骨が大きく動くように肩を回す。散歩や水中歩きなど全身運動も首の筋力を保ってくれる。

千葉教授は「首は重たい頭を支えながら、神経や血管の通り道となっている重要な場所。日常の動作に気をつけ、加齢による頸椎症などを防いでほしい」と話す。

◇     ◇

■入院・手術は数日から1週間

保存療法で首の痛みや手足のしびれが改善しない場合には手術治療も検討する。手術は、頸椎の骨の一部を切除することで脊髄や神経根の圧迫を改善する。脊髄の圧迫が広い範囲に及んでいる場合に選択される「椎弓形成術」、脊髄は神経根への圧迫が1、2カ所だけの場合に選択される「前方除圧固定術」、神経根の圧迫が1カ所だけのときに選択される「椎間孔拡大術」などがある。

千葉教授は「最近では、これらの手術に内視鏡や顕微鏡を使うことで傷を小さくし、体の負担を小さくする手術が行われている」と話す。入院期間も短縮され、数日から1週間程度の入院ですむことも多いという。

(ライター 荒川 直樹)

[日経プラスワン2016年7月16日付]

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