入門講座 トルコ手芸「オヤ」でアクセサリー
主役となる色決めよう
「まずは2人1組になって、糸玉から糸を巻き取っていきましょう」。10人ほどの参加者たちがテーブルを囲み、隣同士で協力しながら作業が始まる。糸の準備が終わり、色とりどりのビーズが白いフェルトの上に広がると「きれいな色ね」という声が上がった。
西武池袋本店(東京都豊島区)の手芸用品売り場サンイデーが毎月開く「ビーズの縁飾り」教室は2010年から始まり、年々参加希望者が増えている。1回完結でトルコのレース編み「オヤ」を応用したアクセサリーや縁飾りの編み方を教える。この日、参加者は約2時間半で、紫を基調にしたビーズ5色と焦げ茶色の麻糸を使い夏向けのブレスレットを1本作った。
トルコへの興味をきっかけに3年前から教室に通い始めたという古庄映子さんは自作のネックレスを身に着けて参加。「エスニック調のアクセサリーが好き。トルコの物はあまり売っていないので、作るのが楽しい」と笑顔を見せる。
講師を務めるのは「トルコの伝統手芸『オヤ』でつくる ビーズを編み込むすてきアクセサリー」(高橋書店)の共著者で手芸家の西田碧さんとデザイナーの今村クマさん。西田さんは「ブレスレットならくさり編み、引き抜き編み、こま編みといったかぎ針編みの基本だけで作れる」と語る。セーターなどの編み物と違い、小さなアクセサリーは初心者でも最後まで挫折せずに続けやすいという。基本を覚えたら、イチゴやカモミールのモチーフ、レースの付け襟など複雑なものも編めるようになる。
編みながら旅行気分に
オヤとはトルコ語で縁飾りの意味。イスラム教徒の女性用スカーフの飾りが原型で、母から娘へ口承された。「目の数や編み方を間違えても完成すればいい、というおおらかさが特徴。気楽に取り組んでほしい」(西田さん)
教室や著書で教えるのは日本人の初心者でも理解できるように考案したシンプルな編み方だ。使うビーズもガラスビーズのほかウッド、メタリックなどを自在に組み合わせ、伝統モチーフをファッションに合わせやすく現代風にアレンジ。編み図を基に素材や色を変えれば自分だけのアクセサリーも作れる。
色選びのコツは「主役の1色を決めること」と今村さんは言う。また、「合わせる服の柄から1色を選ぶとコーディネートしやすい」(今村さん)。
本来、オヤには縫い針で糸を結んで作るイーネオヤ、かぎ針編みのトゥオヤ、ビーズを編み込むボンジュックオヤなど、様々な技法がある。
「宮廷から農村まで手工芸が広まったオスマン帝国時代、特にアナトリア地方で盛んになった」と日本トルコ民間交流協会会長の石本寛治さんは話す。かつて、オヤは大家族制度の下で感情を直接表現することが難しかったトルコの女性たちの「意思伝達の手段でもあった」。トウガラシの飾りで夫やしゅうとめへの不満を表し、アーモンドの飾りで愛を伝えたという。
トルコ文化に関心を持ったら、本場のオヤを学んでみるのもおすすめだ。トルコ文化センター(東京都新宿区)の手芸教室ではイーネオヤとトゥオヤを教える。不定期で開くチャイパーティーではトルコの紅茶やお茶請けをふるまい、縁飾りのスカーフやアクセサリーのほか手芸用品を販売する。トルコ人講師のビルセル・ハンさんは「私も子どもの頃から姉や母とおしゃべりしながらオヤを編んできた。ぜひその文化に触れてほしい」と話す。
この夏、旅行気分で異国文化に思いをはせ、自分だけのアクセサリーを作ってみてはどうだろう。
(柳下朋子)
[日経プラスワン2014年7月5日付]
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