黄熱・デング熱・MERS… 海外での感染症に警戒蚊・動物・生水に注意を

W杯に限らず海外に行くときは早めに厚生労働省検疫所のホームページなどで感染症の情報をチェックし、対策を取ることが重要だ。例えばブラジルは地域などによってはA型やB型の肝炎、狂犬病なども予防接種が推奨される。デング熱は東南アジアなども流行地域だ。

MERSの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)

最近、WHOが警戒を強めているのはサウジアラビアを中心に流行するMERSだ。同国の首都リヤドで働いていた60代の米国人男性は4月中ごろ、微熱が出て気分が悪くなった。呼吸器の症状はなかった。約10日後にロンドン経由でシカゴに渡航。その3日後、息切れやせき、発熱などが起き、翌日に救急救命室で診察を受けた。

MERSの症状は発熱、せき、肺炎、下痢など。軽症の人も多いと分かってきたが、それでも致死率を患者データで単純計算すると約30%と非常に高い。特効薬や予防ワクチンはない。厚労省は日本で患者が見つかった場合に強制的な入院などが可能な感染症の分類に入れることを決めた。

今年4月に感染者が急増。すでに米国や欧州、アジアでも見つかった。ただ、患者は中東への渡航歴がある人たちで、流行地域が広がったわけではないので、中東に行く場合には気をつけよう。

■持病ある人重症に

「特に持病のある人は要注意」と国立感染症研究所の松山州徳室長は助言する。MERSの症状は発熱、せき、肺炎、下痢などだが、「重症になるのは持病のある人と分かってきた」。糖尿病や高血圧、心臓病の人、腎臓病で透析している人などだ。

「ラクダに近づかないようにする」(松山室長)。主な感染源はヒトコブラクダとほぼ決まってきた。現地ではラクダのミルクを未殺菌で飲むケースがあるので、これも避けた方がよいという。

飛沫感染が主体と考えられるが、人から人への感染は濃厚接触の場合で、継続的に人の間で感染が広がる状況ではない。潜伏期間は2日~約2週間と考えられている。帰国後に発症した場合は感染症外来のある医療機関を受診し、中東を訪れたことを医師に告げる。検疫所や保健所に相談するのもよいだろう。

このほか海外の感染症では下痢などを起こす例が多いので、水と食べ物に注意するのが基本だ。「生水は飲まず、いったん沸かした水か、ペットボトルのミネラルウオーターを飲む。氷にも注意する。生ものは避け、十分加熱した料理を食べる」(岡部所長)。果物を口にしたいときは、皮をむいてないものを自分でむいて食べれば比較的安全という。手指もよく洗おう。

感染症の種類にもよるが、患者との濃厚接触を避け、不用意に動物に近づかないように心掛ける。安全な日本とは違うという意識が大切だ。

(編集委員 賀川雅人)

[日本経済新聞夕刊2014年6月6日付]

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