なぜか続く痛み 「慢性痛」治療に新たなアプローチ

腰、肩、腕、膝など慢性的な痛みに悩む人は多い。病院で診てもらっても、はっきりとした原因が分からず、いくつもの医療機関を渡り歩く患者も少なくない。最近、そんな慢性痛のメカニズムに関する研究が進んでいる。麻酔科医、整形外科医、精神科医など複数の専門家がチームで治療に当たる体制づくりもスタートした。

痛みは、ケガや内臓の病気など、体の異変を知らせてくれる大切なサインだ。多くの場合、病気が治っていく過程で痛みも鎮まっていくものだが、なかには治癒しても痛みだけがずっと残ったり、診察しても痛みの原因が分からなかったりする場合もある。これが慢性痛だ。

痛みの治療に詳しい日本大学総合科学研究所教授(駿河台日本大学病院麻酔科)の小川節郎さんは「ここ10年ぐらいの研究により、慢性痛を引き起こす心と体の複雑なメカニズムの一端が解明されつつある。新たな治療のアプローチも登場している」と話す。

小川さんは、慢性痛の原因は大きく分けて3つあるという。1つ目は、変形性膝関節症、関節リウマチなど現在の医療では完治が難しい病気による痛み。がんの痛みもその一つと考えていい。

■外傷の後遺症も

2つ目は、最近、テレビCMなどでも知られるようになった神経障害性とう痛(神経の痛み)だ。これは帯状疱疹(ほうしん)などの感染症、交通事故による外傷などの原因で神経が傷つき、いつまでも痛みが続く。糖尿病も病気が進むと末梢(まっしょう)の神経にダメージを与えるため、慢性的な痛みを感じるようになることがある。

3つ目は、心理的な影響が深く関与する中枢機能障害性とう痛だ。小川さんは「脳には過剰な痛みなどを抑制するオピオイド系と呼ばれる神経があるが、強いストレスなどが原因でその機能が損なわれ、小さな刺激でも激しい痛みを感じたりすることがある」と説明する。慢性痛のなかで、最も患者数の多い腰痛も、椎間板ヘルニアなど明らかな原因が分からないことが多く、中枢機能の障害が深く関与していると考えられている。

うつ病の患者では、体の痛みを症状として訴えることがあり、慢性的な痛みが病気を悪化させていることもある。この「うつの痛み」も中枢機能障害性とう痛の一部と考えていい。さらに、全身に原因不明の痛みが走る病気として知られる線維筋痛症も中枢機能の関与が考えられている。