住まいの美観と防災を両立する3カ条
インテリアと両立意識
東急ホームズ(東京都渋谷区)が2013年、渋谷に設けたモデルハウスの1階には、60本のワインが並ぶ約4畳の明るい1室がある。豪華なワインセラーと思いきや、缶詰め、簡易トイレ、蓄電池など防災用品もギッシリ。実は部屋全体が強固な壁に守られたシェルターなのだ。
このモデルハウスを企画した町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー(東京都港区)の町田ひろ子校長は、家の美観と安全性を同時に高めるインテリアを「美防災」と名付け、普及を進めている。避難場所とは思えない明るいしつらえで、おしゃれな食品庫にもなるシェルターはその見本の一つ。「これほど大規模工事でなくても、美観と防災を両立する工夫は色々ある」(町田さん)という。
最も手軽なのは、トイレや窓辺など、モデルハウスの至る所に置かれたアロマキャンドル。パステル調のキャンドルは室内色彩を整える効果もあるが、真の狙いは停電対策だ。非常時に慌てないよう、事前に明かりが必要な場に配してある。アロマキャンドルを選ぶのは停電でトイレ水洗ができないとき、臭いを和らげる効果もあるからだ。
キャンドルに限らず、非常時は明かりの確保が大切で、特に廊下には気をつけたい。町田さんは「寝室近くの奥まった廊下は『暗いから』と、物置スペースに使われやすいが、これが危ない」と話す。災害時に暗さと、物の散乱が二重に避難を妨げるからだ。
廊下を明るくするのにはインテリアミラーが役立つ。角度を調整して鏡を壁に配すると、窓から遠い場所でも屈折で自然光が入る。鏡を複数使ったり、光沢のある壁紙を併用したりすると効果は高まる。上手に採光すれば、家全体の明るさが増すうえ、防災対策にもなり一石二鳥だ。
非常食の備蓄はシェルターまで作れば万全だが、一般的な間取りの家なら極力キッチン近くにまとめる。賞味期限が近い缶詰などは普段の料理に使い、すぐ補充する。期限切れで捨てる品をなくし、収納場所も小さく済ませる工夫だ。収納する棚の扉裏にコルクを貼って購入日などを書いたメモをとめておくと見た目もスタイリッシュだ。
町田さんは「防災が普段の暮らしの質の向上にもつながると思えれば、備えを考えることが楽しくなるはずだ」と話す。
ポーチ、かわいく携帯
災害に自宅で襲われるとは限らない。外出時にはどんな備えをすればいいのだろう。10~30代女性有志で災害対策に取り組む任意団体「防災ガール」代表の田中美咲さんは「防災用品をまとめて持ち歩きたい。その際はかわいい外見の袋を選ぶことが意外に大切だ」と話す。
実際、田中さんは簡易トイレや体温低下を和らげるエマージェンシーシート、ビニール袋、使い捨てカイロ、高カロリー菓子など非常時に役立つ品々をヒョウ柄の小型ポーチにコンパクトにまとめ常に持ち歩いている。
防災用品が入っているとは思えない袋だが「どんなに中身を吟味していても、持ち歩かないと意味がない。気に入ったデザインのポーチを選ぶことが、防災用品を常備する習慣づけの第一歩になる」(田中さん)。
防災ガールは女性の視点から、わかりやすくおしゃれな防災を普及させる目的で発足した。女性なら誰でもフェイスブックページ(https://www.facebook.com/bosaigirl)で入会できる。女性同士で相談すると新しい防災術が見つかるかもしれない。
(堀大介)
[日経プラスワン2014年3月1日付]
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