ヘルスUP

病気・医療

ご飯・パン減らす「糖質制限食」、是非巡り論争続く 糖尿病を予防・安全に懸念…

2014/1/28 日本経済新聞 朝刊

 炭水化物の主成分「糖質」の摂取を減らす「糖質制限食」の是非を巡る論争が続いている。ダイエットや血糖値の管理に生かす動きがある一方で、極端な制限は安全性に問題があるとする見方も根強い。糖質制限食に統一した手法がなく混乱を助長しており、広く使われている「カロリー制限食」のように方法を確立する必要があると専門家は指摘する。
低糖質食の普及を目指す「食・楽・健康協会」が発足。代表理事の山田悟氏(左から2人目)と支援企業の代表者(左から江崎グリコの江崎悦朗取締役、1人おいてローソンの玉塚元一COO、キリンの橋本誠一常務)

 北里大学北里研究所病院の山田悟・糖尿病センター長は2013年11月、キリンや江崎グリコ、ローソンなど企業9社の協力を得て低糖質食品の開発と普及を目指す団体「食・楽・健康協会」を設立した。低糖質食品の種類を増やし、糖尿病や肥満の予防につながればと期待を寄せる。

■英米では部分容認

 血糖値が高くなったときの食事療法はカロリー制限が主流だ。ただ、カロリーを計算する手間と空腹感が残るため長く続けにくい課題がある。山田センター長はカロリー制限食の効果を認めつつも、より実行しやすい道として糖質制限食の積極的な導入を唱える。

 この糖質制限食の基本は1日の糖質量を130グラム以下に抑えること。1食あたり20~40グラムだ。ご飯なら茶わんに半分弱、6枚切りの食パンなら半切れが約20グラムに相当し、おかずが多めになる。イモ類や揚げ物の衣などにも糖質が含まれるので注意は必要だ。

 「1日130グラム以下」は糖尿病患者でもあった米国のリチャード・バーンスタイン医師が1970年代に始めた治療法とほぼ同じだ。長年の実績が08年論文にまとめられた。山田センター長はカロリー制限食の課題に直面した時にこの論文を読み「これだ」と直感。他の食事療法と比較し信頼性の高い方法と確信した。

 糖質制限食は当初、特殊なダイエット方法として否定的に受け止められていた。海外で大規模な追跡調査が積み重ねられ、2年程度の短期間なら体重の減少や血糖値の上昇を抑える効果が徐々に認められてきた。11年の英糖尿病学会に続き、13年に米糖尿病学会も糖質制限食を部分的に容認する見解を表明した。

 これに対し日本糖尿病学会は従来の考えを貫く。13年には「糖尿病における食事療法の現状と課題」と題した提言をまとめ、糖質制限食の安易な利用に注意を呼びかけた。糖質を減らしてもカロリー摂取が増えれば効果に疑問が残るうえ、長期的な効果と安全性に科学的な根拠がない点を問題視している。

 糖質の不足から、筋肉のたんぱく質を分解して肝臓内で糖につくり替える反応が起き、筋肉が細くなっていく心配もある。糖尿病学が専門の清野裕・関西電力病院長は「特に高齢者の場合、寝たきりや他の病気を引き起こすリスクが高まる」と指摘する。国民全体の炭水化物の摂取量は頭打ちになっているのに、糖尿病患者数は増えている。糖質だけを悪者扱いするのはおかしいという意見もある。

ヘルスUP新着記事

ALL CHANNEL