3年前の冬。記者は同僚との食事を終えて帰宅した。しかし、どうもみぞおちの辺りが鈍く痛い。寝ようにも寝付けず、深夜に近所の総合病院の時間外診療を受けた。
食あたりでもしたかと高をくくっていたところ、担当した医師は「即入院してください」と宣告。10日間の入院を余儀なくされた。そのうち3~4日は脂汗が出る激痛に襲われ、6日間絶食。診断は大腸憩室炎だった。医師からは「もし憩室が破れていたら大変なことになっていました」と言われ、愕然(がくぜん)とした。
■年齢とともに増加
大腸の腸管の内壁の一部が外側に向かって袋状に飛び出したのが憩室だ。内視鏡でみると、くぼみのようになっている。大腸の検査をすると、10人に1人程度の割合で、憩室が見つかるという。要町病院付属太田記念消化器がんセンター(東京・豊島)の太田博俊センター長は「憩室の数は人それぞれ。一つとは限らず、複数ある人もいる。憩室ができる割合は年齢とともに増加する」と話す。「週1回は憩室のある患者を診ており、珍しくはない」
大腸がはじまる右下腹部の上行結腸から、横行結腸、下行結腸と腹部を一回りして、S状結腸、直腸となり肛門につながる。太田センター長によると、大腸憩室は上行結腸や大腸の手前にある盲腸に近い「右側大腸型」が一般的だ。最近は、肉食や高カロリーの食事などが原因で、欧米人と同様のS状結腸付近にできるケースも増えている。左右両方に憩室がある人もいる。
大腸憩室があっても多くの人は無症状だ。なかには下痢、軟便、便秘などの便通異常や腹部膨満感、腹痛といった症状が出る場合もあるが、それほど深刻ではないという。
しかし、憩室に細菌や便などがたまり炎症を起こす大腸憩室炎になると、強い腹痛や腰痛などが生じる場合が多い。下痢、発熱、便に血が混じるといった症状も伴いやすい。太田センター長は「上行結腸に起きた憩室炎の場合は、急性虫垂炎と判別が難しいこともある」と指摘する。