パソコン・スマホで腱鞘炎 親指だけ症状出ることも出産後の女性もなりやすく

「パソコン作業を続けていたら、指を動かしにくくなった」「大量の資料をホチキスでとじていたら、手首が痛くて物をつかめなくなった」――。これらは日常生活でよく見られる手首や指の腱鞘炎(けんしょうえん)の症状だ。早めに対処しないと悪化するやっかいな病気でもある腱鞘炎。予防と対策について、専門家の話を聞いた。

他の動物とは異なり手で道具を自在にあやつる人間にとって、腱鞘炎は宿命的な病気ともいえる。15世紀に近代印刷が登場するまで、多くの本は写本師による手書き文字で作られていたが、その職業病として腱鞘炎の症状があったと伝えられている。

現代社会で、手や指を酷使するのはIT機器だ。中川整形外科(東京都世田谷区)院長の中川種史さんは「患者全体では中高年が多いが、若い人では長時間のパソコン作業による腱鞘炎が増えている」と話す。画面が大きいスマートフォン(スマホ)を親指で操作する人の場合は、親指だけに症状が出ることもあるという。

■ホルモンが影響

患者は女性に多い傾向があり、出産や更年期などでホルモンバランスが変化することが原因と考えられる。しかも、出産後の女性は授乳や入浴などで常に乳児の頭を手首で支えなければならず、更年期の女性は家事に親の介護などが加わり、腱鞘炎を発症しやすいというわけだ。

東邦大学医学部教授の池上博泰さんは「腱鞘炎は、手指を動かす体のメカニズムと深く関わっている。それを理解することも予防と対策には重要だ」と話す。

まず、体を動かすとき筋肉の収縮を骨に伝えるのが腱という組織だ。複雑な動きをこなす手や指にはたくさんの関節があり、それぞれ細長いヒモのような腱がつながっている。そして、指を動かすとき、この腱が骨から浮き上がらないよう、筒状の留め具の役割をしているのが腱鞘だ。

腱鞘内には腱の動きをスムーズにする滑液が分泌されているが、手や指の使いすぎによって腱と腱鞘がたえず擦れ合うと炎症がおきて腫れ、腱の動きが悪くなると同時に痛みを生じる。

指の根もとなどにある腱鞘と腱に炎症が起きて重症化すると、曲げた指を戻すときに途中でひっかかり、バネのようにカクンと指が動く「ばね指」という状態になる。

また手首の親指側にも太い腱鞘があり、この場所で炎症が起こると、手首を曲げたり物をつかんだりすると痛みを生じる「ドケルバン病」の状態になる。

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