今年の夏は浴衣美人 着こなしとしぐさのポイント
色・柄 いろいろ試着
会社員の沢田菜緒子さんは7月上旬に東京・浅草で開くほおずき市を楽しみにしている。同僚の女子10人で出かける予定で、参加者のドレスコードは浴衣。「みんながどんな浴衣を着てくるか楽しみ」と心が弾む。
浴衣姿は花火や祭りなど日本の夏の風景に溶け込み、洋装とは違う特別感を放つ。
自分にぴったりの浴衣を選ぶコツを高島屋の呉服バイヤー、武田陽子さんに聞いた。数多くの商品の中で目移りするが「まずは浴衣を着てどのような姿になりたいか店員に伝えて」という。かわいらしい、華やか、シック、粋など具体的な言葉が大切。好みの色柄が明確であれば伝えたい。
店員は目鼻立ちや体形を見ながら似合う商品を勧める。既製品は必ず試着する。姿鏡で肌の色になじむか、柄が全身のバランスを崩さないか、確認する。「似合わないと思った商品が実際に着てみるとしっくり来ることが多々ある」という。
一般的に身長の低い人は小さな柄を選びがちだが「大きな柄でもデザインが縦に流れていればうまく着こなせる」。仕立てるときも反物を顔の横などに当てて選ぼう。
帯で雰囲気をガラッと変えられるのが浴衣の面白い点。柄物の帯も増え、組み合わせは多種多様。ここでも悩みがちだが「意外に黄色は万能色」と武田さん。帯を結び、上からベルトのように帯締めや帯留めを付け、小物で遊ぶと着こなし上級者に見える。今年の浴衣は3~4色を使った商品が主流で「明るい青や緑を差し色にしたものが多いのが特徴」という。
浴衣は着物と違って下に長じゅばんを着ないので、比較的簡単に着付けができる。
浴衣と帯のほかに、布製のひも2~3本、帯の下に締める「だて締め」、帯の間に挟む「帯板」などを用意。本の解説などを見て自分で着ることもできるという。着付け後は図を最終チェックの参考にしてほしい。
襟元はのどのくぼみが隠れるくらいの空きを心がける。浴衣の下は肌着なので大きく開くとだらしない。首の後ろをあける、衣紋を抜くという女性特有の粋な着こなしもこぶし1つ分が目安だ。丈はくるぶしが隠れるくらい。短すぎると浴衣姿が一気に幼くなる。
長沼静きもの学院は「ゆかた撫子(なでしこ)コース」を設け、90分授業を2回受ければ浴衣を自分で着こなせるようになる。渋谷校(東京都渋谷区)教室長の古沢たつ美さんは「浴衣は体の凹凸が目立たせない方が美しく着こなせる」と話す。体形は円筒が理想で、くびれの大きい人はウエスト回りにタオルを巻いて補正する。汗も吸収し着崩れもしにくくなる。
所作にも気配りを
浴衣は江戸時代などの部屋着のようなもの。庶民は素肌の上に、湯上がりに着ていた。現代では特別な装いのような感覚になりがちだが「洋装に例えるとTシャツにジーンズのような格好」(古沢さん)だ。結婚式の披露宴、ホテル、目上の人との会食の場などフォーマルな場では避けたい。
一方、「わりと簡単に着られるのでカフェや居酒屋などに、普段からもっと浴衣を着て出かけてほしい」と話すのは、着付け教室とカフェを併設する花想容(東京都新宿区)の田中由起さん。ここでは着付けを終えた生徒が浴衣のままカフェで女子会を開き、談笑する姿も珍しくない。
浴衣姿をさらに美しくするのに気をつけたい所作も頭に入れておこう。背筋をすっと伸ばし、胸は張りすぎない。着物に比べると裾は開いているが、大またでは歩けない。階段を上るときは右手で裾を少し上げて足が開きやすいようにする。椅子に座るときは足元をそろえる。
気をつけたいのは腕。「袖から二の腕が見えるのは格好が悪い」と話すのは、全日本きもの振興会専任講師の安田多賀子さん。電車のつり革やタクシーを呼ぶときなど、片腕を上げるときに逆の手を添えるだけで洗練された着こなしになる。
長い袖に慣れていないとドアノブにひっかけたり、食事をするときにコップを倒したり、思わぬ失敗をすることもあるので気をつけよう。
「浴衣を着て街を歩いていると、いつもより視線を感じるので自然と行儀が良くなる」と話すのは花想容の着付け教室に通う浅倉奈央さん。長い髪の人はまとめたり、素足でげたを履くのでかかとのお手入れをしたり、細かいところにも気配りしたい。
(坂下曜子)
[日経プラスワン2013年6月29日付]
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