取り寄せしたいご当地缶詰
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日本では百数十年の歴史がある缶詰。最近はご当地グルメの人気にも乗り、郷土色も豊かだ。取り寄せができるおすすめの缶詰を専門家に選んでもらったところ、地元特産の海産物を使ったものを中心に、花見のお供や贈り物にして喜ばれそうなものなど、個性が詰まった品々が並んだ。
ベスト10の缶詰のうち、8つは海の幸のうまみがぎゅっと詰まったもの。中でも1位になった船泊漁業協同組合(北海道礼文町)の「宝うに」は特産のエゾバフンウニがひとつの缶にぎっしり。ふたを開けると、北海の磯の香りがふわりと広がる。
礼文島の海域は北からのリマン海流と南からの対馬海流がぶつかり、海産物が豊かなところ。「宝うに」は高級品として有名なエゾバフンウニを蒸し、職人が厳しい目で選んだ塩だけで味付けをした。
1缶2900円と高価だが「濃厚なウニの満足感は大きく、日本酒と一緒にゆっくりと味わいたい一品。わざわざ取り寄せてでもまた食べたくなる」(梶本裕二さん)。酒のお供としてはもちろん「ホカホカのご飯に乗せたり、パスタに入れたりしても良く合います」(同漁協)。
同じ「宝うに」では、粒が比較的大きいキタムラサキウニ(1缶1800円)も取り寄せができる。
2位はレインボー食品(広島県竹原市)の「スモークドオイスター オイル漬」。地元産のカキのむき身を香ばしい木材で薫製にしてから綿実油漬けにしたものだ。
宝うに同様、味付けは塩だけ。「綿実油が淡泊なのでカキの風味が損なわれていない。熱々にして、みじん切りにしたタマネギと一緒に食べるのがおいしい」(黒川勇人さん)。レモンを少し搾って味わうのもまた、よさそうだ。
肉系で唯一10位内に入ったのは、沖縄県物産公社が販売する3位の「『わしたポーク』シリーズ」。豚肉のミンチを固めて缶詰にしたポーク缶は、ゴーヤーチャンプルーなど沖縄の料理には欠かせない家庭の「常備缶」だ。
ポーク缶は米国産が定番だが、同公社が豚肉や塩など県産素材にこだわり、2002年に商品化した。いろいろな料理に使いやすい「わしたポーク」のほか、唐辛子入りの「スパイシーポーク」、粒々チーズ入りの「チーズポーク」も人気だ。「厚切りにしてこんがり焼くだけで十分おいしい」(佐々木桂さん)
素材別で目立ったのがサバを使った缶詰で、10位内に4つ入った。ただ、同じサバ缶でも調理法や味付けが異なり、それぞれ個性を競っている。
4位の「鯖へしこ油漬」は、観光施設「若狭フィッシャーマンズ・ワーフ」を運営する若狭湾観光(福井県小浜市)が販売。へしこはぬかと塩で魚を漬けたもので、若狭地方などで昔から作られていた。商品は小浜の天然塩を利かせたサバのへしこを油漬けにした。
異色なのは、信田缶詰(千葉県銚子市)が作る6位の「サバカレー」。「サバの臭みがなくとても食べやすいカレー。姉妹品のイワシカレーもおすすめ」(間口一就さん)。1缶でカレーライス1食分の量で、大きめにカットしたサバと合わせて、ジャガイモやタマネギ、ニンジンなど野菜も入っている。
9位の木の屋石巻水産(宮城県石巻市)の「金華さば みそ煮」は、ブランド力がある大型の金華サバを使った缶詰で「脂の乗り具合がほかのものより一段上」(梶本さん)。高木商店(茨城県神栖市)が作る10位の「『ねぎ鯖』シリーズ」は「長ネギとサバがうまみと香りを互いに移し合っている上品な味」(黒川さん)が特徴だ。
海産物の珍味なら、7位に入ったシンヤ(金沢市)の「ふくら印 たらの子味付」。マダラの卵を甘辛く味付けしたもので「魚卵の味がとてもしっかりとしている」(間口さん)。
贈答品としても喜ばれそうなのは、味の加久の屋(青森県八戸市)が作る5位の「元祖いちご煮」や日光ゆば製造(宇都宮市)の8位の「味付巻ゆば」。
ウニとアワビで仕立てたいちご煮は「今まで食べた郷土料理のスープの中ではぴか一」(佐々木さん)と推す声も。「いちご」という名前がついたのは、器にわけたウニの様子が「朝もやの中にかすむ野いちご」を思わせるからだといわれているそうだ。
味付巻ゆばは「ゆばの缶詰自体が珍しい。さっぱりとしていてやさしい味」(市川慎治さん)だといい、海産物の缶詰とはひと味違う楽しみがありそうだ。
10位内には入らなかったが、北尾商事(京都市)の「京・丹波大納言 ゆであづき」や志ほや(岡山市)の「マスカット缶詰」、大盛食品(福岡市)の「かしわ水炊き」などを推す声もあった。
大手通販サイトの売れ筋や雑誌の特集、関連書籍などをもとに、地元の食材や調理法を生かしている缶詰商品があり、自社や自店のホームページで取り寄せができることを明記している全国の約50店の商品をリスト化。この候補を中心に、専門家に上位10位までを選んでもらった。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。
市川慎治(「新橋 缶詰Bar」店長)▽大久保美代子(酒販店「枡久」店主)▽梶本裕二(居酒屋「博多めでた屋」店主)▽黒川勇人(「おつまみ缶詰酒場」著者)▽佐々木桂(詩人・エッセイスト)▽タカイチカ(ライブ&ダイニングバー「音楽室DX」シェフ)▽藤田俊彦(居酒屋「遊缶倶楽部」店主)▽間口一就(バー「銀座ロックフィッシュ」店主)▽行澤洋人(缶詰バー「mr.kanso」二条城店店長)
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