サラリーマンが老化を意識することが増えた背景として、松下氏は「定年が延びたことが大きい」とみる。かつて55歳で定年退職していた時代は、衰えを痛感する前に仕事から離れていた。今は60歳を超えて働くのが珍しくない時代で、やがて65歳定年の時代になるだろう。サラリーマンは老化と付き合いながら、仕事をするのが当たり前になる。

最近、アルツハイマー型認知症の老人が増えているのも、同じ理屈だという。松下氏は「私が医者になった1960年代初めのころ、アルツハイマーの患者は少なかった。養護施設に1人いるかいないかくらい。今では半数が該当する施設も珍しくない。これもひとえに寿命が延びたため」という。

会社人生などの“寿命”が延びれば、サラリーマンが老いを意識するシーンが増えるのも当然

当時の男性平均寿命は65歳。松下氏は著書「なぜ、どのようにわれわれは老化するか」(かまくら春秋社)の中で、次のように解説している。「アルツハイマーを発症する遺伝子は、ある程度年を取らないと作用しない仕組みになっていた。平均寿命が短い時代、大半の人は、この遺伝子が動き出す前に人生を終えていたので、アルツハイマー患者の数は、結果として少なかった。認知症患者の急増、それに伴う介護の問題は、長寿社会の産物であり、世の中全体で対応すべき課題だ」

老化を感じるのは嬉しいことではないし、親が認知症で要介護になれば深刻な問題だが、その要因やメカニズムが理解できれば、少しは不安が和らぐ。仕方がないことなのかと、受け入れる心の余裕が生まれる気もする。老化を少しでも緩和するために、日ごろどんなことを心がければいいのか、松下氏に聞いたところ、「まあ夜更かしをしないことですね」。

日の出とともに起き、夜になったら寝る。自然の摂理や地球のリズムに合わせた生活をしていれば、ストレスも衰えも少なくなる。「夜に仕事をする人はストレスが多いのです」と言われ、新聞記者という仕事は夜型の人が多い。だからストレスをためる人が多いのかと、妙に納得してインタビューを終えた。(編集委員 鈴木亮)

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