危機を乗り切るリーダーの思考力を養う読書法とは  富士フイルムホールディングス社長 古森重隆氏

写真フィルムの需要急減という変化に対応できず、米国のイーストマン・コダックは破産法の適用申請に追い込まれた。一方、富士フイルムホールディングスは、抜本的な事業構造改革によって危機を乗り切った。古森重隆社長が、英国を救ったチャーチルに共感するのもうなずける。 

古森重隆富士フイルム社長

40歳くらいで読んだウィンストン・チャーチルの『第二次世界大戦』は、とても勉強になりました。2、3回、読み返し、若い人にも読むように折にふれて勧めています。

戦時中、首相の座にあって、英国を勝利に導いた苦闘の回顧録です。ノーベル文学賞を受けたことでも知られています。

今何が起きているのか、これから事態はどう展開するのか。チャーチルの現状分析がすごい。英国は何をしなければならないか、結論を出したら、即座に断固としてやる。

「人間は事実を見なければいけない。なぜなら事実が人間を見ているからだ」というチャーチルの言葉があります。事実とどう向き合うかに、その人の人間性が反映する。いわば実力を映す鏡だというわけです。

事実を冷徹に見て、希望的観測などに流されずに現実的に対処するのは、英国人らしいリアリズムですね。

厳しい現実を見据えて、勇気を持ってぶつかっていく。政治家に見習ってほしいと言いたいですが、骨太の精神は経営にも通じます。私も若いころから、会社のためによかれと思ったことは、摩擦を恐れず、実行してきました。

自分の信念を貫く姿勢は、読書によって磨かれた。

子供のときから本が大好きでした。家族で中国東北部から引きあげてきたので、家にはこれという本はあまりありませんでした。「少年ブック」や「少年クラブ」などの子供向けの雑誌も読みましたが、父が買っていた米国の雑誌「リーダーズダイジェスト」や「中央公論」を小学生で読んでいました。

中学ではスポーツなどに熱中して、読書はたいしてしませんでしたが、高校に入って、運命的な本との出合いがありました。吉川英治の『宮本武蔵』です。武蔵の自分を厳しく律して剣の道にまい進する刻苦勉励の姿勢にいたく感動しました。

男はこう生きなくてはいけない。以来、物事にとことん真剣に取り組むようになりました。さらにあおったのがロマン・ロランのベートーベンをモデルにした『ジャン・クリストフ』です。この2冊が私の人生を変えましたね。

読書にも力が入り、学校の図書室にあった世界と日本の文学全集を手当たり次第にほとんど読んだのも高校時代でした。受験勉強をしなければならない時期も、読書に時間の半分を割いていました。

大学では、哲学者ニーチェの『ツァラトストラかく語りき』を読んで、私の考えにぴったりだと思いました。

「人間は本来、自由で強くて高貴な存在なのに、為政者の陰謀で宗教に毒され、哀れな迷える子羊のようになっている。人間は獅子のごとく、雄々しく正しく生きなければならない」。こうニーチェは願望し、それを「神は死んだ」という言葉に込めています。『ツァラトストラ』は繰り返し読み、ニーチェの本はほとんど読んでいます。