反省・後悔… 20歳だった私へ、伝えたいこと
12日は成人の日。期待に胸を膨らませ、126万人の新成人が今年も誕生する。そこで今回は、成人式から20年以上を経た40歳以上の人生の先輩たちに、振り返って20歳の自分に言っておきたいこと、新成人へのアドバイスをインターネット調査で聞いた。
<コレはやっておこう>
待ち受ける転機に備えるべし
○「買い物でストレス発散するのはやめよう。若いうちにお金の使い方を勉強したほうがよい」(40代女性)
○「少額でもよいからコツコツと積み立てていたらよかった」(50代女性)
○「一人暮らしで貯金はあまりできなかったけど、自炊などで節約して、頑張って貯金しよう」(40代女性)
▼結婚や自宅の購入、自己啓発の投資など人生の転機や節目にはまとまったお金が必要になるもの。まさに「備えあれば憂いなし」だ。
ハタチの今こそ! 若いときは時間がある。時間を味方に自分名義のお金をためよう。たとえば少額投資非課税制度(NISA)を使い、毎月5000円から積み立てできる国際分散型の投資信託などはどうか。就職前から始めると、生きた経済を実感し、自分で判断する力が身につけられる。(経済エッセイストの井戸美枝さん)
キャリアアップへ基礎力を養うべし
○「やりたい仕事なら、多少の人間関係の問題は乗り越えられる」(60代女性)
○「定年までの仕事が毎日楽しく幸せだった。退職してからもお付き合いができて最高」(60代女性)
○「気の進まない仕事が、だんだん適職と思えるようになった」(60代男性)
▼いつの時代も就職活動に不安はつきもの。「若いときは自分に何が向いているのか判断が難しかった」(60代男性)と振り返る人もいた。
ハタチの今こそ! まずは仕事に就こう。必ずしもやりたいことを絞り込めなくてもいい。さまざまな経験をするなかで自分の適性などは必ず見えてくる。どんな仕事にも意味があるので、何を身につけられるかを考えて臨み、基礎力を養おう。転職は30代に。(法政大学教授の宮城まり子さん)
脳が若く、時間のあるうちに吸収すべし
○「20歳前後でとても勉強したことが今につながる」(60代男性)
○「読書のほか講演会などにも積極的に行こう」(60代男性)
○「今フランス語を学び始めたがなかなか理解できない。若いうちに始めるべき」(60代女性)
▼就職したり育児が始まったりするとじっくり学ぶ時間をとりにくい。
ハタチの今こそ! 興味のあるモノ以外にもあえて目を向けて、物事を総合的にとらえたり、深く考えたりする力を身につけよう。社会にでると、近視眼的なモノの見方では通用しない。インターネットの情報だけでなく、長編の文学作品や様々なニュースが載る新聞などを読むことも大切だ。(宮城さん)
○「成人して一人で生きていける気がしたが、自分の家庭を持ち、周りの支えのおかげとわかる」(40代男性)
○「仕事ができるのも家族の支えがあるから」(50代男性)
○「亡き父ともっと話をしておけば良かった」(50代男性)
○「成人式の振り袖をプレゼントしてくれた祖父母が3年後に他界した。祖父母孝行も忘れずに」(60代女性)
▼自分を思ってくれる親や祖父母ら家族がいつまでも健康で元気とは限らない。家庭を持って家族のありがたみがさらにわかる人が多いようだ。
○「現在、資格を取り、給料が上がった」(40代男性)
○「50を過ぎて会社から資格取得をすすめられ、若い人の何倍も時間がかかった」(50代男性)
▼頑張って取得した資格を味方に、収入や仕事への満足感を高めた人は多い。取得は若いうちがいいとも。
○「何をやりたいかを決め、その準備をしよう」(60代男性)
○「ダメなら引き返して再出発する勇気も」(60代女性)
○「節目で10年後など将来を考えることも大切」(50代男性)
○「フランス留学が人生の転機に」(50代男性)
○「成人式の記念に10日間、台湾一人旅をした経験が今の自分の基盤になった」(60代男性)
○「20代の留学がなければ今の自分はない」(40歳女性)
<心がけておこう>
○「時間は使い方で価値が変わると今、気付いたから」(60代女性)
○「1日美術館や書店で過ごすのはささいなことかもしれないが、そんなぜいたくができなくなる」(50代女性)
○「カラオケや飲み会も楽しかったけれど、習い事や勉強など有意義に使えたのではと後悔している」(40代女性)
○「歯はケアをしないと年を取ってから泣きをみる」(60代男性)
○「喫煙や飲酒のしすぎで病気になった」(50代女性)
○「健康でさえいれば何にでも挑戦できる」(50代女性)
○「目標をもって努力をした結果なら、失敗をしても自分で納得ができる」(50代女性)
○「漠然と英語の勉強をしたため成果が出なかった」(60代女性)
○「目標を達成しようと努力すると人生が充実する」(40代男性)
○「積極的に取り組み、多くの引き出しを身につけられた」(50代男性)
○「今もいろいろ挑戦して充実しているが、もっと若いうちからやっておけばよかった」(40代男性)
○「バイトもしたことがなかった」(40代女性)
○「親に感謝して親孝行しておこう。元気なうちに親と一緒に出かけておこう」(50代女性)
○「自分のことで精いっぱい、周りの人を思いやる余裕に欠けていた」(60代女性)
表の見方 順位の右の数字はその項目を選んだ人数を点数にしたもの。写真は昨年、東京都千代田区で開かれた成人式の様子。
振り返ってみれば、若さは武器
「20歳の君のがんばりがあったから現在の私がいる」(50代男性)など、自分の歩みを肯定する人が多かった。ただ、思い起こせば貯金や勉強、仕事の選択など、若さを武器にもっとできることがあったと忠告する。
法政大学キャリアデザイン学部の宮城まり子教授は「20歳の今、必要なのは心の筋肉をつけておくこと」と話す。社会では考え方も世代も違う人と交わらねばならない。「気の合う仲間とばかりでなく、あえて違うタイプと交流しストレス耐性を身につけて」と話す。
生きる時代が異なれば生活スタイルも常識も違い、今後も終身雇用や社会保障制度といった環境は変わるかもしれない。それでも「自立して生きるたくましさはいつの時代も必要」と社会保険労務士で経済エッセイストの井戸美枝さんはいう。
20歳は友達関係や容姿、恋愛などでの悩みも多い。「老け顔で悩んだが、今は若くみられる。気にしないで」(40代女性)、「女友達のいない寂しい青春だったが、将来は明るい」(60代男性)と、つらかった昔の自分を励ます声も。
禍福はあざなえる縄のごとし。自力で未来をひらける大人になろう。
<宇宙飛行士・毛利衛さんからエール>
本物と向き合い ベスト求めよう
20歳の時は、不安で仕方がなかった。当時、私は北海道大学理学部の学生。研究者を目指していたが、周りが優秀に見えて自信がなかった。視力と運動神経のよさをいかして航空機のパイロットなど他の職業も考えたほうがいいかとも思った。
迷いが吹っ切れたのは、大学の長期休みを利用して何度も旅に出かけたことがきっかけ。全国の行く先々で出会った職人さんや農家の方たちは皆、好きな仕事を喜々として語ってくれる。本当にやりたいことは研究だと気づかせてもらえた。
時代が変わっても、20歳のときは仕事や人生に悩むもの。簡単に手に入る情報では表面的な判断しかできない。実際に人に会うなど本物と対峙してこそ、得られるものがある。
若い可能性に賭けて努力するもよし、現実を鑑みて別な道を探すもよし。運もある。それでも自分なりに何かを究めようとし、ベストを求めることが大切だろう。
◇ ◇ ◇
調査の方法 2014年12月上旬、日経生活モニターを対象に「20歳の自分に伝えたいこと」を聞き、その結果を基に「具体的な行動」編と「心がけ」編として25項目ずつの選択肢を作成。同月中旬にマクロミルを通じ、全国40~60代の男女を対象に5つまでの複数回答とその中で最も伝えたい1つを、インターネット調査で回答してもらった。有効回答人数は1034、各年代で男女ほぼ同数。
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