等身大で帰ってきた「ULTRAMAN」
初代の数十年後を舞台にした漫画で
ウルトラマンだったハヤタ・シンの息子、早田進次郎は生まれながらに特殊な力を持っていた。平和に暮らす彼の前に謎の敵が現れ――。初代「ウルトラマン」のテレビ放送開始から50年となる今、初代の数十年後を舞台にした漫画「ULTRAMAN」(清水栄一・下口智裕著、小学館クリエイティブ)がヒット中だ。初代を知らない若い世代も取り込み、7巻までの累計部数は約200万部に上る。
本作は、2011年に創刊された青年漫画誌「月刊ヒーローズ」(ヒーローズ発行)の創刊号から表紙を飾った看板作品。著者はアニメ化もされた人気漫画「鉄のラインバレル」で知られるコンビだ。
編集部がウルトラマンを題材に執筆を依頼すると、著者の2人は特撮への造詣が深いがゆえに「漫画ではできない」と一度断った。だが話し合いを続けるうち、物理的にも精神的にも「等身大のウルトラマン」というコンセプトが生まれ、「これなら行ける」。本作のウルトラマンは人間が変身して巨大化するのではなく、主人公たちが強化スーツをまとった姿で描かれる。
有名作に材をとったことには営業上の利点もあった。掲載誌の「ヒーローズ」は、書店に置かれずセブンイレブン等で販売される特殊な流通形態。第1巻発売時は書店での販売に不安もあったが、ウルトラマンの知名度から好意的に扱ってくれる書店が多かった。「科学特捜隊」の衣装を着た女性や着ぐるみの初代ウルトラマンを書店に派遣するといった新刊発売時のキャンペーンも効果的だった。
メーンの読者は20代後半の男性。初代の放送をリアルタイムで見ていない層から強く支持されているだけに、現在約2割の「女性読者をもっと開拓したい」と担当編集者であるヒーローズの小林範善デスクは意気込む。初代のファン層である40~60代へのさらなるアピールも課題だ。
海外からの評価も高く、既に英仏伊など5カ国語版が刊行され、他言語への翻訳の話もいくつか進んでいる。単行本5.7巻で、作中のウルトラマンのフィギュアをつけた限定特装版を用意したところ完売。バンダイからもフィギュアが販売され、まだ映像化されていない作品にもかかわらず好評を博している。(海)
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